研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -001/080page

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この「学習指導の個別化」に関する研究は,昭和55年度から3年計画で取り組んでいるものであり,本年度はその第3年次に当たる。

第1年次と第2年次の研究結果については,福島県教育センター紀要第41号「個を認める研究」及び紀要第47号「個を生かす研究」ですでに発表したところであり,ここでは,その要点のみを述べることとする。

1 第1年次(昭和55年度)研究の概要

(1) 研究のねらい

児童が真に学習に取り組むためには,その基盤として学習意欲がなければならない。本研究では,一斉指導の中で児童一人一人の学習意欲を高めるという意図のもとに,これまでの指導のあり方を見直し改善するという立場から,個々の児童に対するより効果的な指導のあり方を追究しようとしたものである。

本研究では,児童が真に学習そのものに興味と関心と喜びを持ち,自分の力で学習に取り組むようにするための重要な契機として「個を認める働きかけ」を取りあげた。

個を認める働きかけ=児童の性格や学力などを十分考慮した上での賞賛,励まし,受容,共感,叱責(しっせき)など個を生かすための教師の働きかけをいう。

(2) 研究主題の解決策

第1年次は,小学校における国語科・算数科の授業を取り上げ,解決策を次のようにとらえた。

[1] 前提条件

児童一人一人の性格と学力とを把握するために,下記の資料を活用する。
・Y−G性格検査 ・学力検査 ・知能検査
・前学期の成績 ・事前テスト等

[2] 解決策

授業ごとにあらかじめ3〜4名の児童を決めておき,授業の中で「個を認める」場を設定し,短時日のうちには少なくても1回はどの児童にも「個を認める働きかけ」をする。このことを継続して行う。

(3) 研究の結果

[1] 検証授業

解決策に基づく検証授業を9月〜11月の期間中継続することとし,その間,国語科・算数科ともに3回の授業研究を実施した。

授業研究では,個に応じた教師の「個を認める働きかけ」のあり方を中心に協議され,効果的な指導の方法が追究された。

[2] 解決策の効果の判定

解決策の効果は,検証前(9月上旬)と検証後(12月上旬)に実施した,(ア)児童のアンケート,(イ)教師の徴候観察記録,(ウ)児童の作文について,χ 2 (カイニ乗)検定による前後の変化の検定をした。

その結果,国語科・算数科ともに,(ア)と(イ)の検定により,学習意欲と深くかかわる項目で有意差が見られ,また,(ウ)からも教師の意図的・計画的な「個を認める働きかけ」による効果と判定できる記述が見られた。

このような結果から,我々は,本研究における解決策をさらに長期にわたって実施することにより,児童一人一人が真に学習そのものに興味と関心と喜びを持ち,進んで学習に取り組むようになるものと考察することができた。

(4) 研究のまとめ

本研究を推進する過程において,意図的・計画的に「個を認める働きかけ」の効果的なあり方が追究されてきたが,その主なものを次に掲げる。

[1] 基盤としての人間的ふれあい

「個を認める働きかけ」をするためには,何よりもまず,教師と児童,児童と児童の温かい人間関係がその土台になければならない。特に教師は,児童一人一人の全人的理解の上に,それぞれの成長を見守っていこうとする温かい心が必要不可欠となる。また,教師の「個を認める働きかけ」は,単に一教師の一児童への働きかけであるにとどまらず,それが契機となって,グループの仲間から,あるいは学級全体から認められるようになっていくことが確認された。この波及作用こそ,我々の「個を認める働きか


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