研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -002/080page

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け」の効果をより一層高めてくれるものである。

[2] 個のとらえ方

本研究では,児童の特性を性格と学力の両面からとらえることとし,Y−G性格検査と教師の観祭記録により性格の把握を,知能験査・学力険査・学期末評定・事前テストの結果などを学力の把握の手がかりとした。

従来,ややもすると,学力の把握に力点が置かれていたように思われるが,個に応じた働きかけを目指すとき,児童一人一人の性格を的確に把握することが,学力の把握と同等に必要である。児童の性格は一人一人が違ったものであるので,それぞれに異なる児童の性格をよく見きわめ,個に応じた適切な働きかけを工夫ししなければならない。

[3] 個を認める場

個をとらえる児童の特性(性格や学力)に応じて,「個を認める」働きかけを授業展開の「どこで」行うのが効果的であるかが問題である。

児童に大きな内的報酬を得させることのできる場は,本時の学習目標と大きくかかわるところ,いわゆる授業のヤマ場といわれるところと考える。「個を認める場」は,言い換えれば,児童の活躍する場でもあろう。教師は,その児童を授業展開のなかでどのように活躍させるかを,意図的・計画的に位置づけておくのである。

[4] 個を認める働きかけ方

「どこで」認めるかと関連して「どのように」認めるかが問題となる。授業研究会等で確認された,効果的な働きかけの例を挙げてみると,
○児童の発表を大切にし,それを生かしていくこと。
○机間巡視を有効に活用すること。
○努力の過程を認めてやること,などである。

以上述べたように,第1年次においては,一斉指導の中で児童一人一人の学習意欲を高めることをねらいとして,「個を認める働きかけ」を研究することによって,学習指導の個別化の方策を探ろうとしたものである。

2 第2年次(昭和56年度)研究の概要

第1年次の「個を認める」研究を推進する過程で浮きぼりにされた大きな問題点は,当然のことではあるが,「教師の個を認める働きかけは,働きかけられた(認められた)根拠がその児童によって承認され,その結果,児童の心に大きな喜びにまで高められなければならない」ということであった。

そこで,「個を認める働きかけ」の効果を高め,更に研究の深化を図るために,第2年次の研究の視点は「個を生かす働きかけ」とし,図画工作科・体育科の授業を取り上げ,その教科の特性を踏まえ,それぞれ副主題を設けて研究を推進した。

〔I〕 図画工作科  「個の特性を生かす研究」
一人一人に真の喜びのある学習の成立をめざして

(1) 研究のねらい

児童一人一人に主体的な学習を進めさせ,その過程で,個の表現上のつまずきを個の特性に応じて,意図的・計画的に取り除く働きかけをし,自己実現にまで導くことや,個の良さや持ち味を十分認める働きかけをしていけば,「自らを生かし」また「自分が生かされた」ことが契機となって,児童一人一人に真の喜びのある学習が成立するという立場から,「個の特性を生かす」学習指導のあり方を追求しようとしたものである。

(2) 研究主題の解決策

[1] 前提条件


児童一人一人の特性を把握し,個を生かすために,下記の資料を学習指導カードにまととめ,活用する。・Y−G性格検査 ・徴候観察記録
・前学期の絵画成績 ・絵画作品の造形分析
・造形力テスト ・学習に関するアンケート
児童一人一人の主体的な活動を中心とした授業展開を図り,それぞれの進度に応じた個別指導を配慮する。(単元内進度別学習)

[2] 解決策

〈1〉学習カードに,自己の主題・課題を設定し,作品完成までの見通しを計画させ,授


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