研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -006/080page
[4] 自分のつまずきや到達度を確認しながら,自己の、課題解決を図ろうとし, [5] わからないところや障害に遭遇したら,自分から進んで先生や友人に質問したりしてそれを乗り越え,
学習の終了の時点では,
[6] 学習によって獲得した自己の成果を,満足感,充足感をもって振り返り, [7] 残された自己の課題もとらえることができ,新たな課題を目指して学習に取り組もうとする意欲をもつようになる。 このようにとらえてみると,「個の確かな学習の成立」を図るために,教師は児童生徒に対して,
[1] 児童生徒一人一人に学習のねらいを明確にとらえさせる。 [2] 児童生徒一人一人の持つ特性を把握し,それを基に児童生徒の自己理解を援助する。 [3] 今,取り組まなければならない自己の学習課題が何であるかを一人一人がとらえられるように適切に援助し,示唆してやる。 [4] 児童生徒一人一人が分からないところや障害に遭遇したとき,それを乗り越えられるような場を設け,適切に援助し,励ましてやる。 [5] 学習集団の中での安定あるいは所属欲求が満たされるような働きかけをする。 [6] 児童生徒一人一人が満足感・充足感をもって振り返り,新たな課題を見つけて学習意欲を燃やすよう認め,励ましてやる。 このような教師の働きかけは,児童生徒一人一人が自己の課題をしっかりととらえて,それに応じて主体的に学習に取り組んでいくための援助活動,激励活動ということができる。「個に応ずる学習の成立」を図るときに,一人一人の特性を押さえたこのような援助・激励活動を主に「分枝型学習」を通して働きかけ,その効果的なあり方を追究しようとするものである。
(3) 「個に応ずる働きかけ」と教科の特質
児童生徒一人一人の特性を適切にとらえて,「個に応ずる働きかけ」をし,一人一人に「確かな学習の成立」を図ろうとするとき,注目しなければならないのは,教科の特質である。個のより確かな学習の成立を目指し,「個に応ずる働きかけ」をするという点では各教科に共通しても,働きかけの視点は教科・教材によって異なってくるはずである。
数学の場合は,すじ道のとおった考え方を学ぶ教科であるので,特に学習のつみ重ねを必要とする。そこで,数学の学習指導においては,課題に対する一人一人のつまずきや到達の度合いをよく把握し,つまずきのある場合にはいち早くその原因をとらえ,それを解消させる適切な指導の手だてや場を設定し,個に応じた働きかけをする必要がある。
具体的には,ある内容についての学習をしたあと,形成的評価問題の結果をもとに,自己のつまずきや到達度をとらえさせ,個に応じた学習を進めやすくするために分枝型学習を取り入れ,その中で個の特性や学習の実態に応じた働きかけを行うことにする。そうすることによって,一人一人の生徒に確かな学習が成立するであろうと考え,そのための学習指導のあり方を追究しようとするものである。
英語科においては,認知事項の基礎的・基本的内容を基盤として,技能面である言語活動を行い,表現力の育成を図るとともに,情意面の向上にも結びつけようとしている。
その際,それぞれの生徒の学力における習熟の状況に応じられるように,一連の資料にA,B,C3段階の難易度を踏まえ,分技型学習に発展させるわけである。
具体的には,言語材料などの知識の習得や題材の内容理解をさせたあと,表現力育成のための言語活動を行い,生徒一人一人が英語で表現する喜びを味わうことができたとき「個の確かな学習」の成立が図られたとし,そのための学習指導のあり方を追究しようとするものである。
なお,研究の評価と今後の課題については,教科編のまとめのところで研究教科ごとに述べることにした。