研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -027/080page

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われている。しかし,注意係数が大きいからといって,常にまずい,不適当であるということではなく,異質な原因は何かなど一応検討してみるべきであるという程度の意味である。

S−P表から,注意係数の高い生徒を2名あげてみる。

SNo.13の生徒は,注意係数0.91である。事後テストでは14点(93%)を得点し,誤答したのは問3(3)だけであった。この誤答した問いは事前テストでは正答しており,ケアレスミスのようである。このために注意係数の値が高く出た。1学期の評定は2であったが,学習に意欲的に取り組み,2学期には4になった。

SNo.21の生徒の注意係数は0.63である。事後テストの得点は12点で3問正答できなかったが,この3問のうち2問は事前テストでは正答している。むずかしい問題に正答し,やや易しい問題を誤ったことが,注意係数の値を大きくした。

問題についての注意係数(C・P)は,すべて0.4より小さく,異質な得点パターンの問題はなかった。注意係数の高い問題は,他の問題と異質な場合や出題の指示が不明確だった場合などが考えられる。なお,出題問題の配列は,指導順序に従ったものであり,表3からもわかるように,必ずしも難易度順に配列されていない。

[3] 前提条件テストと事後テストの結果の考察

前提条件が,学習成立にいかに影響を及ぼすかを探ってみたい。そこで,事後テストの得点を前提条件テストのそれと比較し,学習の推移を調べてみた。

この2種類のテストの結果について,それぞれ(平均)± ×(標準偏差)を境として,得点の度数分布をA,B,Cの3段階に分け表4を作成した。表の中でA,B,Cの欄のかっこ内の数は得点を表している。例えば,前提条件テストのA(25〜19)は,得点が25〜19までをA群としたことを示す。また,※欄の数値11は両テストでともにAに属する生徒の人数を表し,(6,4,1)は11人の内訳で(上位群,中位群,下位群)に属する人数である。

表4 前提条件・事後テストの相関
得点区分 前提条件テスト
A
(25〜19)
B
(18〜15)
C
(14〜6)
事後テスト A(15〜14)
※11
(6,4,1)
4
(1,3,0)
1
(0,0,1)
16
(7,7,2)
B(13〜11) 5
(2,3,0)
9
(2,7,0)
4
(0,0,4)
18
(4,10,4)
C(10〜2) 0 0 8
(0,1,7)
8
(0,1,7)
16
(8,7,1)
13
(3,10,0)
13
(0,1,12)
42
(11,18,13)

表4をもとに考察をしてみよう。

前提条件になる学習内容が定着してない生徒は,事後テストの得点が低い。テスト問題が適切に作成されていれば当然のことである。

下位群の生徒の伸びが注目される。下位群の生徒13名のうち,12名が前提条件テストではCに属しているが,事後テストの結果では,その12名のうち1名はA,4名がB,7名がCとなっている。このことは,まだ定着していなかった前提になる学習内容に対してフィードバックすることにより,補充治療しつまずきを克服した結果によるものと思われる。しかし,下位2名については,前提条件が回復されず,事後テストでも低い得点であった。この生徒に対しては,指導の機会を多くし,働きかけてきたが,更に継続する必要がある。

ここで,前提条件テストの問題とその正答率を示し,更に考察を続けていくことにする。


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