研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -043/080page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

1 研究のねらい

昭和53年度から3年間の移行措置期間を経て,昨年度より中学校学習指導要領が完全実施となった。英語においては,「外国語を理解し,外国語で表現する基礎的な能力を養うとともに,言語に対する関心を深め,外国の人々の生活やものの見方などについて基礎的な理解を得させる」と示されている外国語科の目標を踏まえ,言語活動の基礎を一層重視しながら,特に表現力の育成に対処することになったわけである。

すなわち,題材の内容そのものからくる目標や,言語材料の基本的な事項を大切にしながら,生徒一人一人に外国語で表現する喜びを与えることが、これからの英語指導の方向と考える。

そのためには,地域や学校の実態に即して,内容や文型,語・連語,文法事項の中から,基礎的・基本的なものに精選し,それらが生徒一人一人にしっかり定着するように配慮するとともに,言語の実際の使用につながる,本当の意味での言語活動へと発展させることになろう。

そこで,以上の方向性を念頭において,具体的な英語指導について考えてみることにする。

英語の学習は,音声面を含めた単語や連語の運用訓練,文型練習,文法事項の理解,和訳など,主として認知事項の習得過程の活動と,それらを基盤にした,生きた言葉として,言語を実際に使用することにより,表現力の育成をめざそうとする活動から成り立っていると考えられる。

そこで大切なことは,この二つの活動の融合である。前述した学習指導要領に明示されているように,中学校の英語は,あくまでも言語活動の基礎を養うことによって,「外国語で表現する基礎的な能力を養う」という外国語科の目標に到達することを目指して行われていることを再確認する必要がある。それは,しっかり地に足のついた言語活動をするためには,基礎的・基本的な認知事項だけはしっかり定着させなければならないことを意味している。そのことが,個の確かな学習の成立をめざす大きな要因になるものと思う。

以下,個の確かな学習の成立を目指す,学習指導の個別化に対処するための基本的な考えについて述べることにする。

まず,生徒一人一人の実態を多方面から把握し,個に応じた働きかけを,意図的・計画的にするきめ細かい指導が必要であろう。

それには,生徒一人一人の特性を把握し,授業展開の過程での個に応じた働きかけの場に生かすことが基本的な留意点となる。

次に,単元や毎時の目標に迫らせるための既習事項の定着の度合を十分掌握し,個々の生徒の実態に応じた指導をすることであると考える。そのことにより,生徒自身も,本時の目標を学ぶために必要な事項の中での陥没点がわかり,めあてをもって授業に参加できるわけである。

そして,実際の学習指導過程の中で,評価を適切に行い,つまずきや到達度に応じた課題を準備して,生徒一人一人の実態に即した,言語活動中心の授業展開が図られるように配慮すべきである。

そこから,英語で表現できた成就感を味わわせ言語に対する関心を深め,意欲の向上にもつなぎたいと考えているわけである。

しかし現状は,上記のような個別的な配慮がたりないままに,文法事項を中心とした言語材料の習得や和訳などの学習活動に余りにも多くの時間をかけすぎ,生徒一人一人に目を向けた言語活動に発展できないでいるのではないかと感じられる。もちろん,よりよい授業の改善をめざして多くの試みがなされてはいるが,まだまだ問題点が残されているようである。英語の学習の中心が,知識の習得のための活動から言語活動へと完全に移行しようとしている今日,指導法の転換や学習のさせ方,学習形態など,解決したい問題点は多い。特に,一斉指導における個別化のあり方が今後の大きな課題であろう。

本研究は,これらの問題点を反省しながら,内容把握の段階での言語活動を中心に,その評価に工夫をこらし,到達の程度に応じた学習課題を通して個別的な働きかけをしていけば,個のより確かな学習が成立するであろうと考え,そのための学習指導のあり方を追究しようとするものである。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。