研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -044/080page

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2 研究の構想

(1) 解決策のための理論

英語指導における「個のより確かな学習の成立」を次のようにとらえたい。

ほとんどの生徒は,はじめて学ぶ外国語である英語に大きな興味と関心をもって中学校に入学する。しかし,学年が進むにつれて,認知面の語・連語,文型,文法などが複雑になり,よく理解できない生徒がかなりでてくるものと思われる。最上級学年になると,その傾向は一層強くなる。英語指導は,その教科の特質上,基礎的な事項からより高度なものへと積み重ねていく過程における学習を通して行われる。生徒一人一人の既習事項の定着の状況を確認し,追指導を行い,新出事項を加えていくわけである。しかし,現実は,さまざまな特性をもつ生徒たちなので,既習事項の定着度合いに大きな差が生じ,英語の授業そのものについていけない状態が続き,英語の学習に対する意欲が低下してしまう生徒が見られるようになる。そこから必然的に学力差がでてくるのは,残念ながら事実であろう。もちろん,この学力差解消は大変困難であるが,少しでも前進するように,前向きに対処しなければならない今日的課題である。生徒一人一人の特性に応じた英語指導がなされなければならない理由は,まずこのあたりから考えられよう。知識,理解を中心とした認知面の指導をしっかりすることにより,新学習指導要領が指向している表現力の育成をめざした技能面の活動の活発化を図ることが,今日の英語教育の当面の目標だからである。

ところで,従来の英語指導は知識偏重の傾向が強く,言語の実際の使用に発展させて行う学習の場を,計画的,意図的に指導過程の中に位置づけることが不足していたのではないかと思う。また,位置づけてはいても,生徒一人一人の特性を踏まえた活動とするための配慮はあまかったと常に反省させられる。そのことは,生徒に表現する喜びを与えないままに授業が流れてしまうという結果を生みだしているわけである。

さて,英語指導は言語活動の指導と言っても過言でない今日,我々教師側の指導法もそろそろ改善の時期に来ていることは誰もが認めているところである。しかし,長い間の継続により,すっかり身についた自分の手法は容易に転換できるものではないが,英語指導を「言語の実際の運用である言語活動の指導」としてとらえる方向で対処しなければならない大きな課題であろう。たしかに,最近の広地域カリキュラムとしての年間指導計画をみても,言語材料の羅列でなく,言語活動の具体的手法を前段に位置づけたり,題材の内容そのものからくる目標を明示しているものが多くなっている。その際一番大切なのは,学習指導過程の中にどう生かされ,より充実した授業が実践されているかであろう。

以上,これまで述べてきたことを簡単にまとめると,言語材料を中心とした認知事項の指導の充実を基盤として,言語本来の姿である伝達・思想内容発表の基本的態度の養成を目指す言語活動中心の授業を計画的,意図的に実施することにより,表現力の向上を目指すのが英語指導の本筋であると言うことになる。

一方,生徒たちに対して,「あなたが英語を学習していて,一番うれしいことはどんな時ですか」という質問をすると,「自分の英語が相手に通じたとき,テレビなどの外国人の英語の話す内容がわかったとき」と答える者が圧倒的に多い。このことは,生徒一人一人が内的報酬を得たことによる満足感を味わえる場面は,英語で相手とのコミュニケーションができたときであることを表しているようである。

そこで,本研究では,言語材料などの知識の習得や題材の内容理解をさせたあと,表現力育成のための言語活動を行い,生徒一人一人が英語で表現する喜びを味わうことができたとき,「個のより確かな学習の成立」がみられたのではないか,ととらえたわけである。

さて,さまざまな特性やかなりの学力差のある生徒一人一人により確かな学習を成立させるため


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