研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -046/080page
いかと考えている。そこで,「学習のめあて表」と同様,生徒の個人差を考慮した,難易度を踏まえた「形成的評価問題」を用意し,それぞれの生徒の到達度やつまずきを確認できるようにする。更に,つまずきの原因が生徒たちにある程度わかるような「補説問題」を活用し,もう一度「形成的評価問題」に返し,つまずきの解消を図らせるようにする。すなわち,「形成的評価間題」と「補説問題」をセットで行わせるわけである。
その方法によって,生徒一人一人が自分のつまずきや到達度に応じた学習が進められるような課題に発展させる。その課題が「コース別学習課題」である。あらかじめ,教師は,生徒の到達度に応じられるように,基礎・標準・発展の三つの段階の課題を準備する。毎時の目標であり,どの生徒にも到達させたい目標を,標準コースに置く。さまぎまな特性をもつ生徒たちなので,中には基礎コースだけでやむなく終わってしまう生徒もあるだろうし,最初から発展的なコースに挑む生徒もでてくると考えられるが,それぞれの個に応じた学習をさせる場を設定しようとするのである。すなわち,各自のコースに枝分かれされて行う学習形態(分枝型学習)をとるわけである。この学習を生徒が行っている間は,教師が生徒一人一人の学習に対する指導・援助をする機会なので,机間指導を中心に,個に応じた働きかけをすることになる。
なお,この学習に用いるさまぎまな課題に取り組ませる具体的な内容は,単なるプリント学習ではなく,表現力の育成を目指した言語活動中心のものでなくてはならないと考え,認知面と技能面のバランスも考慮して,Target Sentenceを取り入れた,Q and A,T or Fテスト,絵を用いた自由表現などを主とする。領域別に言えば,「聞くこと,話すこと」の分野での展開になろう。
[3]について
前述[1],[2]の手法を用いた学習の結果から,各生徒は,自分自身が行った課題が適切であったか,つまずきの克服が図られたかどうか,学習のめあてにどこまで到達したか,個人的な質問はどんなことだろうか,などを反省として「自己評価票」に記録させ,提出させる。一方,教師は,個の学習の成果を把握するとともに,教科の内容そのものに対する指導や,学習の取り組み方に対する励まし,賞賛,などのコメントにより,生徒との人間関係を深め,情意面の向上に結びつけるように配慮する。
ところで,生徒の個人差や,一人一人の個性を十分把握すればするほど,適切な個に応じた働きかけが容易になることから,教師の指導資料として「学習指導カード」を作成し,生徒との対応が意図的・計画的にできるようにする。この「学習指導カード」は,小単元ごとに作成するもので,個の実態を多様な角度から把握し,指導に生かそうとするものである。そのために,Y−G性格検査,教研式中CRT,英語学習についてのアンケート,などの諸検査や調査を実施し,更に,英語学習における個人差に留意して,個別的な指導をしようとしている。また,生徒に対する教師側からの評価の結果を記録,集約し,継続的な指導ができるように配慮している。
以上,生徒一人一人により確かな学習をさせるための方策について,その概要を述べたが,指導及び学習活動と研究調査の関連を示したのが,次の「研究の構想図(1)」と次ぺ一ジの「研究の構想図(2)」である。