研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -045/080page
には,それぞれの生徒の個人差に応じた指導にどのように対処すべきであるかの大きな課題に直面することになる。今回の教育課程の基準の改善の三つの大きな柱の一つには“基礎的・基本的な内容の重視,個性や能力に応ずる教育の実践”をねらいとしていると示されている。このことは,英語指導においては,地域や学校,そして生徒一人一人の実態に即して,基礎的・基本的事項が確実に身につくように教材の精選を行い,言語活動の基礎が一層養われるようにしなければならないことを示唆しているとともに,それぞれの生徒の学習に応じられるように,教育目標,方法の両面からの個別化を図るべきであることを裏付けていると考える。具体的には,生徒たち一人一人の個人差を踏まえた無理のない教材や課題を準備し,それぞれの個性に即応した方法を用いて個に働きかけることであろう。
以上のことから,英語指導のもつ問題点を押さえ,現在の方向性をしっかり見つめながら,生徒一人一人の個人差に応じた学習を進めることにより,「個のより確かな学習の成立」を目指そうと考え,次の方策をたてた。
[1] 毎時の目標に迫るために必要な既習事項の定着の度合いを確認させるとともに,生徒一人一人に学習しようとする目あてをはっきりとらえさせること。 [2] 学習指導過程における評価と補説問題から,各自のつまずきの原因や到達度を確認させ,それらに応じられるような課題を通して,指導・援助ができる場を設定すること。 [3] 学習の結果に基づく自己評価や反省を通して,それぞれの生徒の学習の状況を把握し,個に応じた働きかけが十分行えるようにすること。 以下,これらの三つの方策について,具体的に述べることにする。
[1]について
英語の教科書は単元(Unit),小単元(Lesson),そして学習しやすいように数箇の部分(Section)から成り立っているものが多い。小単元ごとに題材が掲げられてあり,各セクシヨンの言語材料の中から,文のきまりの上から大切と思われる文を目標文(Target Sentence)として示している。したがって,小単元を中心として,題材の内容や言語材料からくる目標を設定し,各セクションヘと細分化するわけである。そこで,実際の授業は,このセクションごとに展開されていくことになる。もちろん,そこに教材の精選,統合などによる重点化が図られるべきであることは当然である。この一連の関連性から,毎時の授業の位置づけをする。
そこで,この毎時間の授業を進めるに際して,あらかじめ小単元の目標を示し,さらに一時間ごとの目標に細分化して,生徒が自主性や主体性をもって,意欲的な学習ができるようにするために「学習のめあて表」を作成する。個人差の大きい生徒一人一人なので,本時の目標に迫るための既習事項の習得の状況にもかなりの違いがある。そこで,下位行動目標を設定し,難易度を踏まえた,授業に直結している予習的課題を行わせることにより,各自につまずきの箇所をわからせることから,学習に対するめあてをしっかりつかませて授業に参加させようとするものである。このことは,生徒の側からすれば,自分の陥没点を掌握しているだけに目標に迫りやすく,また,教師側からは,個に応じた働きかけの場で生かされるわけである。この「学習のめあて表」は小単元の学習に入る前に配布し,その単元の大きな流れを理解させた上で,毎時の学習に対するそれぞれのめあてをもたせ,意欲的に課題意識をもって授業に取り組ませるとともに,学習の仕方も育てていこうとするものである。
[2]について
英語の学習はことばの学習であることから,毎時の目標は,言語材料からきた知識,理解を主としたものでも,内容把握を中心としたものにしても,一単位時間の学習指導過程の中で形成されていく場合が多い。したがって,英語指導における形成的評価は,単元ごとの評価よりは,むしろ小単元や指導過程の中での評価を重視すべきではな