研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -059/080page

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イ 事後研究会の記録より

研究授業の事後研究会は,授業者を含めた12名の研究プロジェクトのメンバーにより,「2−1−2方式の授業研究」の進め方に基づいて行われた。

ここでは,本研究の解決策にかかわる観点項目のうち,No.3,5,7について,その協議記録の主なものを載せ,項目毎に考察を加えることとする。

観点No.3 ,「生徒の理解度を確認するのに適切な英問英答であり,補説問題であったか」について

司会:それでは次に,観点No.3についての観察の結果を発表して下さい。ここではQ and Aを用いているわけですが,形成的評価のための問題として適切であったかどうか,また補説問題とのかかわりはどうでしたか。

K: 私は上位の生徒を観察していましたが,さすが実力があるためか,補説問題までいかずに6問全部正解で,自己評価票に◎を記入しました。ただこの生徒が意欲を示したのは,補説の英問の2の(2)のWere you taken to Hamamatsu?の時でした。彼は修学旅行でそこに行ったということで,目を輝かせてメモをとっていました。教科書の内容から,日常生活へと発展させたこの補説英問は,とてもよかったと思いました。また,その後,教師に指名され,発表できたのでとてもうれしそうでした。まさに,個に応じた指導であったと思います。

S: 私が感じたことですが,英問のあとの補説英文ですが,教科書と全く同じなので,もう少し発展的な何かがほしいということです。
上位の女子でしたが,少し足ぶみの状態でした。しかし,一斉授業の中なのでしかたがないと思います。中,下位にはこの補説英文は効果的だったと思います。

T: 私が観察した中位の生徒ですが,Be動詞や一般動詞ではじまる英問はほとんど一回目で答えていましたが,5〜6の疑問詞を用いた英問は答えが比較的長くなるためかむずかしかったようですが,補説英問のあとは自信が感じられましたので有効だったと思います。ただ,メモをとるのにスペルの点で苦労していたようです。先生が,「スペルのまちがいは気にしなくていいのですよ。」とおっしゃいましたが,やはり障害にはなっていたようです。

Y: 下位群の生徒についてですが,アンサーポールの使い方が大部上手になって観察者によくその英問に対するつまずきの箇所がわかりました。ただ,もう少し教師側のチエックの指示をはっきりすることが,今後の個別指導に生かす意味で大切だと思います。

W: 下位のN男ですが,補説英問がとても効果的でした。わかる授業という点でも,中学校の段階ではくり返しくり返し教科書の英文にもどることは大切なことだと思います。5の(2)のWhere do you live?には,にっこりして答えていました。英語をことばとして表現できたからだと思います。

I: 私は全体を観察していましたが,「聞く,話す」の領域で,メモをとらせながら展開した点がしっくりいかなかったとは思いますが,一斉授業の中での個別化ということで理解しました。
補説英問はまさに言語活動ということで,授業者の日常における実践の深さを感じました。

<考察>
内容把握の段階でのQ and Aを,個人差に応じられるように難易度を踏まえ,更に,補説問題とセットで行ったのは有効であった。特に,標準コースであるBまでは到達させようとする配慮のために,くり返し教科書の英文に戻ったのは,上位群の生徒にはもどかしい感じがしたようであったが,中,下位の生徒にとっては効果的な追指導であったと判断できよう。また,補説英問を身近な事柄に生活化して表現させた手法は,生徒に本当の意味で表現する喜びを与えた,ということで特筆すべきことと思う。


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