研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -025/090page
5年になると男子16%,女子14%とはじめて男子が女子を上回ることになる。更に,6年では,13:8とその差は広がり,とりわけ“たいへんいい声だと思う”と答えた男子は約5%,女子の約2%をこれまた上回っている。また,“ふつうの声だと思う”と答えた児童は,学年を通しておおよそ一定の割合を示しているが,それは,男子40%前後,女子55%ほどである。
ところで,自分の声に自信を持ち,いい声だと思っている児童は,歌唱の学習に対していかなる興味・関心を示しているか。
次の図8−(1)は,“自分の声はいい声だと思う”と答えた児童は,男子全学年166名と女子全学年173名について,更に分析を試みたものである。
あなたは,音楽の時間に歌うことはすきですか,と,設問したその結果である。
男子は,74%が歌うことは好きと答えており,声に自信をもっている場合は,歌唱学習においても積極的な態度に表れやすいものと判断できる。
女子は,90%近くが好きと答え,児童それぞれの声に自信をもたせることが,きわめて重要であることがわかる。しかし,歌唱は声のいい児童だけが楽しむものではない。従って,この逆の思いを抱いている児童について考えることにする。
図8−(2)は,“自分の声はいい声だとは思わない”と答えた児童,男子全学年414名,女子全学年291名について,上記と同様な設問をした結果である。
学年ごとに多少の差はあるが,男子27%,女子58%が声のよしあしとかかわりがなく好きと答えている。しかし,あまり高い割合ではなく,自分の持ち声,いわゆる楽器に対して自信をつけてやることが望まれる。
問7 あなたは,美しい声のだしかた(発声法)を知っていますか。 (1) 結果
表6:美しい声のだしかた
(数字は%)
\ 学年 項目 \ 3年 4年 5年 6年 男 女 男 女 男 女 男 女 よく知っています 14.9 19.3 7.7 16.9 5.0 11.4 5.1 17.3 すこし知っています 32.8 44.4 34.6 35.2 28.9 44.7 29.3 42.9 あまり知りません 31.4 28.6 32.1 31.4 33.1 36.5 36.8 30.3 ぜんぜん知りません 20.9 7.7 25.6 16.5 33.0 7.4 28.8 9.5 (2) 考察
歌唱表現力の伸長を図るためには,児童一人一人の声をより美しいものに高めていくことも大切なことである。この項は,児童の発声法に対する意識について調査することを目的としたものである。
学年によってばらつきがみえる。学習経験が豊かになる高学年の児童が美しい声のだしかた,いわゆる発声法を必ずしも確実に身につけているとはいえない。
男子は,3年で15%が“よく知っている”と答えている。4年で7%,5年,6年で5%と高学年になるにつれ,その割合が小さくなっている。歌唱学習において,表現力を一層高めるために,美しい声のだしかたを工夫するとは大切なことである。歌唱経験の多くなる高学年で,発声法に対する意識が低いという