研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -027/090page

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97名,女子53名について,声変わりになる前と声変わりになってからとで,歌唱学習への関心・態度に変化がみられたかどうか調査した結果である。

図10:変声期と歌唱
図10:変声期と歌唱

男子は,声変わりして歌うことがきらいになった児童が27%である。その理由として,声変わりして思うように声がでなくなったり,笑われるとの心配で歌うことを避けたりしているものと判断できる。

女子は,はっきりとした声変わりの自覚が表れない場合が多いためか,歌唱学習への変化はあまり多くなかった。むしろ,好きになった児童の方が多く見うけられる。

この設問の結果から,歌唱学習と声変わりについては,男女とも深いかかわりを持ちながらも,声変わりになったことの,歌唱に対する興味・関心への影響は認められなかった。

(3) まとめ

これまでは,歌唱学習に関する内容を取りあげ意識調査を行った結果について,考察を試みた。ここでは,それぞれの設問の考察から,かかわりの深いものを選びだし,県内の児童の実態を踏まえながら,歌唱指導上配慮すべきことについて述べることにしたい。

(1) 歌唱指導と児童の声

歌唱において,声は最も大切な素材である。したがって,声のよしあしは,歌唱意欲の高まりと深いかかわりがあるものと思われる。実際に児童の意識をみると,声に自信のある者は,大多数が歌うことは好きと答えているのがわかる。それでは,逆に声に自信のない児童は歌唱についてどのような反応を示しているのであろうか。アンケート調査の問6ではこの点について問いただした。

予想されることではあるが,自分の声に自信がない児童にとっては,歌唱の学習について男女ともあまり魅力を感じていないようである。しかし仮に,いい声に恵まれていないとしても歌唱することの楽しさを十分に味わうことはできる。そこで,音楽の指導に携わる教師に望まれることは,児童一人一人の声を大切にして,それぞれを立派な楽器の一つとして認め,育てることである。自分の声はいいとは思わないと感じている児童,それゆえ歌うことを避けている児童に対しては,本人が思いこんでいる声の劣等意識を取りはずしてやることが大切である。そのためには,児童をほめて,認めてやることである。なんとなれば,それは楽器として二つとない宝であり,変声期を過ごして大人の声になり一層豊かな響きと味わい深い音色に変化する可能性をすべてが持っているからである。そして歌唱の際には,地声で歌うことがあれば,頭声的発声で歌うこともある。また,ファルセットや怒鳴り声も時としては,望まれることもある。声帯の成長の状態によっては,太い声,細い声,強いい声,弱い声,そしてしゃがれ声,あるいは,何らかの原因で音声に障害をきたしている声など,児童は,それぞれが様々な音色の声を持っている。いわゆる“美声”ではないという資質の声であっても,歌うことの楽しさや表現することの喜びを味わうことは,十分できる。そしてこの喜びと楽しさを,学級全体で味わうことにより,教師や友だちとの心の通い合うハーモニーが生まれ,自らの価値を見いだす動機ずけとなって,ひいては,より一層表現力を高めるための意欲の向上と歌唱の学習に積極的に取りくむ態度の育成に役立つものと考える。

(2) 歌唱指導と美しい声のだしかた

歌唱学習における,発声法の指導に関しては,歌唱力を高めるためにのみ機械的な練習の積み上げを図ることは避け,表現の活動を


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