研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -029/090page
「もみじ」(文部省唱歌・中野義見編曲)を教材として例に取り,指導のための一考察を試みる。
(1) 歌唱表現の能力に関する主な指導事項
(2) 歌唱表現の指導目標
曲想を味わい,旋律の美しさを感じ取らせるとともに,美しく豊かに響く声で表現させる。
音楽の美しさを感じ取らせるとともに,低学年で身についた興味・関心を更に高め,音楽活動をしようとする意欲を育てることによって,活動への自発性を伸ばしていきたい。
この歌唱指導では,曲想表現の能力と,歌唱の技能を高めるために,児童一人一人の発達段階を考慮しながら,次の事項に心掛け,豊かな表現能力を身につけさせたい。
[1] 曲想を感じ取り,歌詞の内容を理解して演奏の仕方を工夫する。 [2] 呼吸の仕方に気を付けて,頭声的発声で歌う。 [3] 音の重なりを感じ取り,楽しく輪唱や,合唱をする。 (3) 教材―もみじ―について
高野辰之作詞,岡野真一作曲による。
明治44年「尋常小学唱歌」にて発表される。
2部形式で,同じようなリズムパターンである。
旋律はゆるやかで,大きなフレーズを感じ取ることができる。気持ちを込めた歌唱表現をするためには,歌詞の内容を理解させることが大切である。歌詞を朗読させて,情景を思い浮かばせるなどして,曲趣を感じ取らせることは,創造的な歌唱表現や,豊かな曲想表現を支える基礎となるものである。ここでは,自然の雄大さ,美しさ,もえるような,あぎやかな紅葉,澄んだ川の流れ,そして,絵画的描写の秋の山と静けさの夕日,など,言葉や詞の味わいを感じて,美しい声で表現する工夫をさせることが重要である。