研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -030/090page

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(4) 歌唱指導上の留意点

もみじの楽譜1段目

(※下記の[1]〜[15]は,楽譜の番号と同じ)

[1] 歌いだしの音は,声を“ずりあげる”あ 右上がり矢印 とならぬように注意する。なぜなら,和音のときに響きが濁るもとになる。4拍目“う”は,“あ”と同じピッチに必ずもどるように注意する。

[2] 3度の和音を美しく響かせる。高音部の2小節目,“ひ”の2分音符は,エネルギーをじゅうぶんもたせて,低音部の“あきの”をしっかりと支える。他のパートに対する心遣いを示す。この歌いだしのフレーズを上手にひきついでいくことが大切である。しかも,低音部は歌いおくれがないように,教師は,児童に心の準備をさせなくてはいけない。このアンサンブルが見事にできるということは,教師の指揮法の明確さによるものと思われる。なぜなら,児童に積極的に表現しようとする心構えを持たせることは,指揮者の音楽性とその技法の高まりによるものと考えることができるからである。

[3] “もみじ”の歌唱のねらいに,旋律の美しさを感じ,レガートな表現をすることをあげることができる。したがって,この部分は,大きな流れを感じて,“ゆうひに”をきわめてたっぷりと歌うようにする。児童は,“ゆ・う・ひ・に”と,マルカートぎみに歌いやすい。とくに,教師が大きな声で歌うことを望んだ場合,ややもすると,大きなフレーズとして感じ取ることができなく,こま切れな歌いかたで,ただ元気よくだけ歌いやすい。元気よく大きな声で歌うこと自体はとても良いことである。しかし,ここでは2小節をたっぷりと大きな流れを感じて,しかもレガートで歌うことが望ましい。“ゆ ひに”と“う”だけ強く歌うことがないよう,発音やアクセントに気をつける。

[4] ユニゾン(同音)のピッチをそろえる。

[5] 発声練習で音程の跳躍の練習として取り扱うことが大切である。なぜなら,このフレーズを豊かに表現させることが,この曲をもりあげる基となり,“やま”を美しく,しかも豊かに響く声で歌うことにより,音楽を更に発展させようとする気持ちが育つものである。地声で怒嶋って“やま”の,“ま”がとび出したり,逆に,“ま”を声を出さないで弱々しくなってしまっては困る。

もみじの楽譜2段目

[6] 合唱,輪唱を行う際,とくに重要な心遣いをしなければならないところである。楽譜から見る限りは,とくに難かしいことはなさそうに感じるが,音楽の流れ,前後のバランス,他のパートに対する思いやり,更に,リズムと音程の正確さなどが一度に要求されるところである。

二つのパートの音楽の流れ

つまり,二つのパートに分かれて,それぞれが独立した旋律を歌い,輪唱や合唱を楽しく美しく味わっていたものが,ここで,同じ音程(ユニゾン)となる。したがって,ことばは異っていても音量からいって“斉唱と同じ全体のエネルギー”となって,とくに強調されたような表現になる。このため、音楽の流れに不自然な動きが入り,バランスを乱すことになる。ここは,相手のパートに対しての心遣をじゅうぶんに果たしながら,リズムと音程を正確にそろえ,しかも,声量はひかえめにすることを心掛けねばならない。このことがアンサンブルの難かしさである。ところが,お互いにこの調和がうまくいったときに,音(声)の重なりを心よく感じ取ることができて,


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