研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -043/090page
男子の方が女子より強く認識している項目で目立つものは,「くらしに必要なお金がある」であり,女子の方が強く認識しているものは,「子どもをよい人間に育てる」であった。
3) 家庭の役割
家庭でどの程度仕事を分担しているか,衣食住などの家庭の仕事を7項目あげ,する・しないの程度とその理由を質問した。
その結果は,全項目について「する」と答えたのは男子では約58%,女子では70%で過半数の児童が家庭の仕事を分担していることがわかった。
この実状を仕事の種類によってみると,食生活・住生活に関する仕事と買物を分担している児童が多い。
する・しないの理由について概括すると,する理由では,2年・4年では「家族がよろこぶ」が多く,6年では「いいつけられる」「自分のためになる」が上位を占めていた。しない理由では,「家族がしてしまう」「したくない」があがっている。
以上の調査結果を通してみて,小学校低学年においてもかなり,家庭は人間生活の本拠であり,家庭生活は「本拠における生きる営み」であることを認識していることがうかがえた。しかし,低学年の児童の場合は,家庭生活や学校生活全体をとおしての「家庭生活の認識」の自然形成であり,児童の所属する家庭個々により違いがでてくる。
家庭科教育としての指導が行われていない2学年・4学年の本調査に表われた家庭生活の認識の内容は,家庭生活や学校教育における生活指導・学級指導による生活習慣の形成,特別活動による実践態度の育成,道徳指導による道徳的実践態度の高揚などが「家庭生活認識」の自然形成の土台となっていると思われる。
このような考え方に立って小学校においては低学年から生活指導・特別活動などをとおして生活習慣の形成や実践的な態度を育てるための土台づくりを大切にしていきたい。
また,2年・4年・6年と学年別の調査結果から明らかなように,認識は固定したものではなく,修正と変化を重ねて質が変革されていくものであり,家庭科教育の役割は大である。
家庭科教育に当たっては,科学技術の系統からの吟味と児童の家庭生活の認識の実態からの吟味とを併せて教材内容が選択される必要がある。
以上を踏まえて次に,小学校家庭科学習指導を展開する際の指導資料の研究を行ったので以下に述べる。
4. 小学校における家庭科学習指導
第5学年 食物領域
生野菜の調理を中心として第5学年から家庭科の学習が始まり,食物領域では,簡単な調理ができるようにするとともに,食物の栄養について理解させ,望ましい態度で食事をすることができることを目標にしている。
調理学習としては,児童の発達段階や調理手法の段階を考慮して,最初に「生野菜の調理」からはいっている。
今回の,「家庭でどの程度仕事をしているか」の調査では,児童の約83%が食事のしたく,後片付けなど食生活に関する手伝いをしているが児童が日常無意識的・受動的に生活行為として体験しているものを,ここであらためて観察させ,問題を感じ,思考や実験をして,しっかりと意識させるようにしたい。
調理指導に当っては,基礎的な手法を確実に身につけさせるとともに,技能的なものは,なすことの積み重ねによって向上することを理解させ,実践化への意欲を育てるようにしたい。
調理は食品の調理上の性質をよく理解して,それにさからわないようにしないとよい結果は得られないものである。調理手法の一つ一つにしても