研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -069/090page
校の場合,重点目標の設定は部中心の傾向が強い。「従来のものをあげた」が中学校で14%,高等学校で9%,「企画委員会を設け,作成した」が中学校11%,高等学校10%,全教師の参加による組織体制によって作成した」が中学校14%,高等学校10%となっている。全員参加の協力体制をとるには,手間と時間がかかるが,全員の共通理解を図ることが大切であろう。他の機会に実施したアンケート中における生徒指導上の問題点の中に「生徒指導関係の仕事には生徒指導部の教師のみがたずさわり,その内容を他の教師は知らない」という声があった。生徒指導には,目標,重点設定だけでなく,一人一人の教師の意見を聞く機会や方法を工夫しながら,全教師の共通理解をはかり組織体制づくりをする必要があろう。
表3:生徒指導重点目標の作成手続き
中 N=85,100%
高 N=64,100%
調査項目 中 高 ア.従来のものをそのまま 14 9 イ.生徒指導部が中心になって作成し職員会を経て 59 71 ウ.企画委員会等が作成し,職員会を経て 11 10 エ.全教師の参加による組織体制によって 14 10 オ.その他 2 0 [3] 生徒指導全体計画作成に対する認識
現実に生徒指導全体計画が作成されているのは,後述のとおり,中学校は大部分作成しているが,高等学校ではほとんど作成されていない。すべてにわたって調査したのではないので,正確な判断はできないが,これが大体の傾向であろう。この現状に対して,教師はどう認識しているであろうか。ただ,ここでことわっておくが,全体計画作成調査校とアンケートの回答を寄せた教師は別の学校の教師である。全体計画作成調査校は,中・高各20校であり,アンケートの対象は中学校85名,高等学校64名のものである。
表4によると,「全体計画が作成されているか」の質問に中学校教師の82%は「作成している」と答えており,「作成されていない,わからない」と答えているのが18%になる。中学校では,ほとんど作成されているので,この20%近い教師に対する意識を高めていく必要があろう。そのためには,全体計画作成の手続きの段階で全員参加の体制をとる必要があろう。
問題は,高等学校の教師の場合である。前述のように,現実にはほとんどの高等学校で全体計画が作成されていないのに,84%が「全体計画は作成されている」と答えている。これは,生徒指導年間計画を生徒指導全体計画と誤認した結果である。このように,高等学校については,これに対する啓蒙が急がれるゆえんである。
表4:全体計画作成状況
(中学校)N=85
調査項目 % ア.全体計画が作成されている 82 イ.全体計画が作成されていない 14 ウ.わからない 4 [4] 生徒指導全体計画作成の手続き
「生徒指導部が中心になって作成している」が64%,「企画委員会等が作成している」が8%,「全教師参加による組織体制によって作成している」が13%となっている。全体計画の作成については,このような認知をしているのである。この際,全員で取り組む生徒指導の視点から,生徒指導部中心で企画・運営しているという印象をなくしていくことが必要であろう。
表5:全体計画作成の手続き
(中学校)N=85
調査項目 % ア.従来のものをそのまま 9 イ.生徒指導部が中心になって作成し,職員会を経て 64 ウ.企画委員会等が作成し,職員会を経て 8 エ.全教師の参加による組織体制によって 13 オ.部分的改善を図った 6 [5] 生徒指導全体計画の活用
計画は,最終的にはそれをどう生かしているかが大切である。いかに立派な計画でも,計画を作成しただけでは意味がない。アンケートの結果は「よく理解し,指導に生かしている」と