研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -070/090page
答えているのが33%であり,「あまり指導に生かされていない」というのが57%もある。中学校の場合,全体計画が大部分作成されているのであるが,そのうち33%が実践に生かされているだけで,57%は実践に結びつけることができないと認知している。
ここで,全体計画作成改善の視点として,全体計画作成の各段階で教師全員の参加を今一度反省してみなければならない。同時に,これは単なる生徒指導部だけの問題としてではなく,学校経営という巨視的な立場から見直していく必要があるだろう。
表6:全体計画の活用状況
(中学校)N=85
調査項目 % ア.よく理解し,指導に生かしている 33 イ.あまり指導に生かされていない 57 ウ.わからない 5 エ.その他 5 [6] 生徒指導全体計画の評価
生徒指導年間計画実施の反省評価は,70%ぐらいの学校で実施している(資料省略)。全体計画になると,あまり行われていないというのが実状であろう。これは,単なる生徒指導部のレベルの問題にとどまらず,学校経営の視点から見直す必要があるであろう。つまり,全教師の経営参加という発想に立った生徒指導が望まれるのである。
(3) 生徒指導全体計画を構成する要素
全体計画を構成する要素には,各校の実態によって異なるが,
○生徒・地域の実態
○生徒指導の目標
○生徒指導の基本方針
○生徒指導の重点目標
○学年別生徒指導の重点目標
○領域及びその他における生徒指導の役割
○生徒指導の組織体制
等が考えられる。その実態を調べるために,中学校20校,高等学校20校を調査対象とした。資料としては若干少ないが,大体の傾向はとらえることができるであろう。[1] 全体計画構成要素
上記(3)の項目の順に従って考察していこう。
先ず,生徒・地域の実態については,1,2校を除いて各校の全体計画一覧表の中に記載されていないので,資料としてとることができなかった。生徒指導の目標は,中・高各20校とも設定している。これは当然なことで,いまさら調査するまでもなかろう。次に,生徒指導についてどういう態度,方法で立ち向かうかを示す生徒指導の方針は,中学校ではすべての学校が設定している。高等学校では資料不足で正しく把握できなかったが,若干の資料からは,半分近くの学校で設定していることがうかがえる。次に,生徒指導の重点は,中学校で14校,高等学校で4校である。学校によっては,努力点とか重点項目と称しているようである。これを設定せず,学年別重点目標をあげている場合もある。次にこの小論では最も関心のある「領域及びその他の場と機会における生徒指導の役割」は,中学校で20校,高等学校ではほとんど見当たらない。高等学校が全体計画をもたないのであるから,当然といえるだろう。この分野は,生徒指導が教育課程の領域及び教育課程外の領域等にどうかかわるかという点で,最も重要である。特に教科は独自の目標と指導内容,指導法をもって,推進されるのであるから,そこに,生徒指導の場と機会を計画の中に位置づけることに苦慮しているのが実状であろう。しかし,教科は学校の教育活動の中で教師と生徒の接触時間が多いところから,この領域への生徒指導の位置づけを欠くことは,非常なマイナスである。それにもまして,教科の指導には学習指導だけでは不十分で,生徒指導の方からの援助指導が必要なことは,多くの実践報告が教えるところである。文部省が,第11集「教育課程と生徒指導」を発刊したところからも,その重要性は理解できる