研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -071/090page

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であろう。

表7:生徒の週在校時間の割合
  (長崎市立福田中学校・久保隆則氏による)
  教師,生徒の週在校時間44時間を100%とした場合
合計時間 割合 教師
一般教科授業 25×50分=22.5時間 51.1%
道徳     50分 1.9%
学活     50分 1.9%
正課クラブ     50分 1.9%
ゆとりの時間 3×50分=2.5時間 5.7%
短学活    2時間35分 5.8%
昼食 25分×6=2.5時間 5.7%
清掃 15分×6=1.5時間 3.4%
休み時間    6時間20分 14.4%
放課後    3時間35分 8.1%
◎は全教師にかかわる場,○は主に担任のかかわる場。

学年別生徒指導の重点は,中学校では不明の2校を除き18校が設定している。高等学校でも資料不足から断定できないが,かなりの学校が設定していると推測される。

最後に,生徒指導組織はいうまでもないが,中・高とも全校が組織化を図っている。しかし,生徒指導が学校の全教育活動に機能するように組織が十分に運営されているであろうか。先ほどのアンケートの結果からも,検討の余地があるであろう。

表8:全体計画の内容
中 N=20
高 N=20
調査項目
(校数)

(校数)
1.生徒指導目標が設定されている 20 20
2.生徒指導の基本方針が設定されている 20 不明
3・生徒指導の重点目標が設定されている 14 4
4.学年別重点目標が設定されている 18 不明
5.教育課程領域及びそれ以外の領域の生徒指導の役割が明確になっている 10 0
6.生徒指導の組織が整えられている 20 20

[2] 生徒指導の重点目標

学校が,生徒指導においてどんなことを目指しているかを知るために,生徒指導の重点目標を検討してみたい。

中学校の場合,20校のうち「秩序・規則」をあげているのが,12校と最も多く,次に「基本的生活習慣」が8校,この2項目とも同一性格のものであるから,あわせて20校が「基本的生活習慣」や「秩序・規則」になっている。次いで,「自律性・自主性」と「自己理解・自己実現」が10校になっている。これに続いて,6校が「目標の設定・計画性」,「個性・能力の伸長」,「学習意欲の向上」,「社会性」,「職業観の育成」等があげられている。こうしてみると,中学校においては,学校の生徒指導の重点目標は,「基本的生活習慣や規則・秩序の基盤の上に,学習意欲を持って,計画的に個性,能力の伸長を図り,自律的に自己理解,自己実現を目指す」というパターンができあがる。

教師の指導面での努力としては,「教育相談」が6校,「非行防止」が4校になっている。これは,「非行防止」策として,「教育相談」が考えられていると受け取ってはどうであろうか。

ところで,学校生活の基礎とも考えられている,「基本的生活習慣や規則」の指導効果があがらないことをなげく声が多い。いくら指導しても,「基本的生活習慣や規則遵守」が定着しないというのである。学校の教育目標は,この「基本的生活習慣」が確立してはじめて,達成されると考えれば,容易なことではないと考えられる。

これについて,指導の方法と内容から考えてみよう。「基本的生活習慣」等は,一斉指導のみでは定着しにくいものではなかろうか。個別的に生徒の不安・悩みを共感的に聞いてやり,そこから,生徒の自己理解,自己受容,自己修正を経て自己実現へ向かう援助によって,はじめて指導の効果があがると考えられる。生徒指導は,本来個別指導にこそその行き方があることを確認する必要がある。また,生徒に対して,一斉に規則,規則で追い込んでも,生徒たちが納得できない規則であっては,それを守ろうとしない限り定着しないのではなかろうか。イソップ物語の「太陽と北風」の教訓はここでも生きるのではないか。教師と生徒との信頼感の上に立って,学校生活に対する満足感,充実感,さらには自己信頼感が起こって,素直に規則を


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