研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -072/090page

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守り,基本的生活習慣も身につくといわれている。つまり,規則でおさえていくだけでなく,生徒の自己実現を図る方向に,指導の重点目標を設定することからはじめることにより,はじめて指導の効果が期待される。したがって,重点目標を設定する場合には,身近なそして実現可能である肯定的な項目を設定する必要があると考えられる。

高等学校の場合は,学校要覧によって無差別に30校抽出してみた。生徒指導の重点目標に,「交通安全」が24校あげており,バイクに関する指導に苦慮していることを示すものであろう。「基本的生活習慣」が19校,これを「規律・規則」と一緒にすれば,高等学校においても,中学校と同じように生徒の「基本的生活習慣,規律・規則」が,多くの学校の中心的な重点目標になっている。「教育相談」が16校,「地域・家庭との連携」が13校,「共通理解」が11校,「生徒理解」が10校と続いている。

ただ,高等学校においては,高等学校進学率の上昇にともなって質の多様化が進み,それにともなって問題行動が増加してきたのであるが,それに応じて生徒指導の重要性が叫ばれてきた。それを反映して,「交通安全」,「教育相談」,「地域・家庭との連携」等,現実的要求によって,このような重点目標が打ち出されてきたのであろう。高等学校教師の生徒指導への積極性が,うかがわれるところである。

しかし,それにしても,生徒指導の開発的側面,つまり,生徒の自己実現を目指す方向で,指導の重点目標を具体的に設定していく必要があるだろう。ただ,個別指導とか人間関係とかについての重点化が,学校の重点目標の中にすこしずつでも見えてきているのは,喜ばしいことである。

表:9生徒指導の重点目標の内容中学N-20高校N=30
中 N=20
高 N=30
中学校 高等学校
(1)秩序・規則 12 (1)交通安全 24
(2)基本的生活習慣 8 (2)基本的生活習慣 19
(3)目標設定・計画性 6 (3)規律・規則 16
(4)個性・能力の伸長・発揮 6 (4)教育相談 16
(5)職業観の育成 6 (5)地域・家庭との連携 13
(6)学習意欲・習慣 6 (7)共通理解 11
(7)望ましい集団行動・社会性 6 (8)生徒理解 10
(8)自己実現 6 (9)生徒会・部活の充実 10
(9)望ましい進路・職業観 6 (10)個別指導 9
(10)教育相談 6 (11)進路指導 7
(11)非行防止 4 (12)問題行動の早期発見 7
(12)生徒理解 2 (13)指導体制 6
(13)交通安全 2 (14)個性能力の伸長 4
(14)人間的触れ合い 2 (17)教師間の連携 4
(15)共通理解 1 (14)責任感 6
(16)中・高連携 0 (15)資料の整備 5

[3] 生徒指導基本方針

アンケート調査によると,中学校の場合,「共通理解」をあげたのが,20校中16校,「指導の一貫性」が14校,「地域・家庭との連携」が12校,「指導の体制」が8校となっている。その方針をまとめると,「共通理解による一貫性をもとにして,さらに地域・家庭とスクラムを組んで,生徒指導に当たろう」とする姿勢を示すものとして,妥当な方向であろう。そのほか,「共通理解」に必要な教師の「研修」や指導への「全員参加」,そして,「一人一人を生かす」への積極的方向づけが,期待されるところである。

表10:生徒指導の基本方針
(中学校)N=20
順位 内容
1 教師間の共通理解 16
2 指導の一貫性 14
3 地域・家庭との連携 12
4 指導体制の強化 8
5 基本的生活習慣 7
6 全領域での生徒指導の推進 6
7 現職教育の充実(校内研修) 6
8 集団と個別の調和 6

[4] 学年別重点目標の内容

学年別重点目標は,学校,学年,学級の実態に応じて,しかも発達段階をおさえ,学年間の一貫性を考慮し設定するのがよいとされている。中学校の場合,1年生では「基本的生活習慣」,


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