研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -074/090page

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の教育活動の全領域で指導するという視点で,組織図の創案を工夫し,運営に関しても明確化する必要があろう。

表12:生徒指導を学級担任や生徒指導部に依存する意識
調査項目 中(%) 高(%)
生徒指導を学級担任や生徒指導部に依存する傾向がある 41.2 74.0
生徒指導を学級担任や生徒指導部に依存する傾向はない 28.2 9.0
上記のどちらともいえない。 30.6 17.0

3.生徒指導全体計画の作成及び改善の視点

前節において,中学校,高等学校の全体計画の現状を検討してきた。その結果,中学校では全体計画は作成されているが,その計画に改善の余地が考えられる。高等学校の場合は,全体計画に相当するものは作成されていないようである。そこで,全体計画作成の方法が,その主要な問題になってくる。この両者の間で,問題は二つになるようであるが,次のように,両者を一つにして考えていきたい。すなわち,中学校の場合は全体計画作成の基本方針や留意点は,そのまま全体計画改善の視点になるのではないか。また,高等学校が全体計画作成のうえで,中学校における計画の視点や改善の視点を確認して,中・高の連携を図りながら推進したらどうであろうか。その了解のうえに,生徒指導全体計画の作成も,その改善も,生徒指導の発想をかえることからはじめなければならない。そこで,生徒指導の意義,全体計画の必要性を生徒指導の手引き,生徒指導の進め方,その他生徒指導の文献を参考にしながら,生徒指導の全体計画改善の手がかりを見つけていきたい。

(1) まず生徒指導への正しい理解

生徒指導全体計画を作成する場合,正しい生徒指導観をもたない限り,その計画は,現実の生徒指導の問題にこたえてくれるものとはならないだろう。つまり,生徒指導を学校生活への適応の指導ととれば,全体計画も適応のみの計画になるだろう。また,生徒指導を非行対策と狭めて考えれば,全体計画も非行対策の計画に終始してしまうであろう。

また,生徒指導に対する無理解の結果,教科指導についての教材研究や入試対策に追われ,それを重要視しがちであることも反省させられるところである。しかし,それだけで,現在の中学校,高等学校は正常に機能しないことは,周知の事実である。そして,学業不振は,教え込みや技術だけの指導で解決するものではなく,特に今,生徒の人格全体を考慮したうえでの指導が強調されているところである。

このように,生徒指導を推進するには,生徒指導の正しい意義をとらえておく必要がある。特に,生徒指導の全体計画という,生徒指導の全体構想を作成するには,欠かせないことである。

そこで,明治図書の生徒指導講座一巻の定義を紹介しよう。生徒指導とは,「ひとりひとりの生徒が人間として尊厳な存在であるという信念にもとづいて,社会的存在としての生徒の個性が,自主的なその自已実現を通して,社会の福祉に対して最大の寄与をなすことができるようになることを目的とし,ひとりひとりの生徒の人格の調和的,統一的発達,自主性,自己理解の育成,社会,職業の要請についての理解にもとづいた社会的参加の態度の育成,人間関係の親和を基調とする集団活動の建設的生産性への寄与能力の向上に関して,集団的・個別的に,開発的(啓発的)ないし治療的(矯正的)な援助をしていく教育的いとなみである」と述べられている。

このような考え方からすれば,生徒指導は各教科の指導と並列するような教育課程の一領域にとどまるものではない。それは,生徒の学校生活の全領域にわたるべきものであり,各教科にも各教科以外の指導にも,生徒指導の考え方ができる限り反映させることが望ましい。つまり,生徒指導は,前述したように,教育課程の全領域及び教育課程以外の領域をおおうような機能をもつものである。その意味で,全体計画


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