研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -075/090page
は,すべての教育活動をおおう計画を想定しなければならない。そして,生徒指導目標の設定の手続き,全体計画の手続き,生徒指導の組織・体制にも,生徒指導の評価活動にも,この生徒指導の理念が反映されなければならない。
(2) 生徒指導全体計画とは
生徒指導全体計画について,義務教育課編「生徒指導の進め方」は,次のように定義している。生徒指導全体計画は「それぞれの学校が,その学校の実態や,児童・生徒の実態およびその課題に即しながら,学校教育の全体を通して生徒指導を展開していくための基本方針や大綱を示すとともに,さらには,それぞれの領域において,生徒指導をどのような内容について,だれが,どのように行っていくかを明らかにしたもの」である。したがって,その性格は教育活動をすすめるうえで,具体的な羅針盤の役目を果たすものでなければならない。
(3) 生徒指導全体計画作成の必要性
全体計画の必要性については,その都度述べてきたが,ここで「生徒指導の進め方」を参考にしてまとめてみよう。これをおさえなくては全体計画作成へ向かう教師の積極的姿勢が定まらないからである。
[1] 生徒指導は全教育活動を通して行われるものである。 生徒指導は,各教科の指導とは異なり,特定の時間や領域に限定されることなく,全教育活動を通して実施されるという性格をもった教育的機能である。実践計画においても包括的な全体計画が作成されていないと,組織的・計画的な指導を進め,生徒指導の効果をあげることは困難である。つまり,全教育活動の中で,「だれが,いつ,どこで,どのように」指導するかの位置づけがないと,生徒指導を具体的に実践する視点を見失うからである。
[2] 教育課程の領域の教育活動に,生徒指導が果たす役割を明確にする。 教科,道徳(中学校の場合),特別活動は,教育課程の領域として,学習指導要領に示された独自の目標を達成することをねらいとする。学習指導は,この教育課程の展開に即して,その教育的価値を達成する機能であるのに対して,生徒指導は,その基盤をつくったり,その促進を援助したり,その正常な路線から脱漏する生徒を救済するような仕事,いわば普通の意味の教育活動に対する精神的,心情的な意味の条件を整備するような仕事を担当することになる。つまり,生徒指導は教育課程に位置づけられている各領域で,生徒が目標達成ができる精神的条件を整備する側面的機能であると考えられる。
このように,生徒指導が教育課程における教育活動とどのようなかかわりをもち,そして,どのような役割を果たし得るかを,全体的な見通しとしておさえておかなければならない。生徒指導全体計画は,それを明確にするものである。
[3] 教育課程外の領域の教育活動に,生徒指導が果たす役割を明確にする。 教育課程外の領域の教育活動には,朝の時間,昼食の時間,休憩の時間,清掃の時間,放課後等は,生徒指導の機会として,あらためて見直す必要がある。これらの場合は,生徒が自由に活動する機会であるから,個性を発見したり,個人的適応や社会性などの指導を進めたりして,自己理解・自己実現の場として,重要である。これを洗い出して全体計画の中に位置づけることが必要である。
その他,生徒の生活は学校教育の場だけではなく,日曜,祭日,休業中も含めて家庭や地域社会で過ごしている時間も長いので,これらの学校以外の生活も対象としなければならない。そこでの余暇の活用のしかた,自由な生活を通しての道徳性,社会性を育てるという点にも,生徒指導の手を伸ばしたいものである。
[4] 全体計画は部門別計画の基盤である。
全体計画を基盤として,部門別計画が作成される。すなわち,全体計画は,各部門における