研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -004/071page

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のみならず,家庭生活においても,遠く生涯教育を見とおしても大切なことと思われる。なぜならば,ものをつくることは人間本来の目然の営みであり,児童の夢の具現化,喜びであるからだ。
 ところが,児童の身のまわりには,価値ある豊富な材料が存在しており,児童はそれらを用いてさまざまなものを産み出していくみずみずしく柔軟な発想や創意工夫を持ち合わせているはずであるにもかかわらず,児童はそのことには気付いていない。
 そこで,図画工作科においては,身近な材料を用いて児童の豊かな発想を生かしつつ,ものをつくることの大切さを気付かせることが,非常に重要な今日的課題となってくる。
 以下,図画工作科における「身近な材料でものをつくることの意義」について,箇条的に挙げてみることにする。


(1) 児童の自由な発想や創意工夫を引き出し,はぐくみ,つくる喜びを得させることができる。
・身近にある材料は,比較的加工の手を加えられていない,生のままの自然な材料が多い。したがって,身近な材料を用いてものをつくることは,市販の材料によってものをつくることよりは,児童に自由な発想や創意工夫を発揮させることができ,つくる喜びを得させることができる。

(2) 児童に材料の価値観を見直させることができる。
・使い捨てられ,何の価値もないと思った材料であっても,創意工夫を生かすことによって,より価値の高いものを産み出すことができることに気付かせることができる。

(3) 児童に材料観を広げさせることができる。
・ものをつくるためには,徒来の既製の限られた材料だけでなく,さまざまな材料が存在することに気付かせることができる。

(4) 児童にさまざまな材料の性質の理解を深めさせることができる。
・身近にある材料は,豊富で多様化しているので,それらを用いて製作していく過程で,それぞれの材料の性質を,体験的に理解させることができる。

(5) 児童の手の機能を高め,さまざまな材料処理の技術・技能を身につけさせることができる。
・児童の身近にある材料は,加工の手が加えられていない自然な生の材料が多いので,児童が製作していく過程において,児童の手の技能を高め,処理加工の技術をおのずと身につけさせることができる。

(6) 児童に個性豊かな作品づくりをさせ,自分らしさが表現できた喜びを感じさせることができる。
・誰でもが手際よく,均質的な作品のできやすい市販の教材セットは,創意工夫の余地が乏しくややもすると創造作用に欠ける一面がある。身近にある材料を教材にすると,画一的でなく,児童それぞれの個性が表れた豊かな作品が期待できる。また,完成の喜びも大きいものと思われる。

(7) 児童に学習の生活化を図らせることができる。
・学習したことが,家庭生活の中で生かせるようになる。例えば,家庭生活の中で使うものや,飾るものをつくったり,遊ぶためのものをつくったりすることができる。

(8) 児童に自分の住んでいる地域的特性について理解を深めさせることができる。
・ものをつくることの材料を,身辺の身近なものに求めることは,児童が住んでいる地域の特色ある材料を用いることにもなるのでおのずと,それぞれの地域の特性について,認識させる糸口になる。

(9) 児童にものを大切にする習慣を身につけさせることができる。
・身近にある使い捨てられた,もはやかえりみられないものに価値を再発見して,それらの材料を用いてものをつくることにより,資


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