研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -008/071page
4. 指導の実際 −身近な材料の教材例−
木片・針金・割りばしを材料とした場合に考えられる題材例の中から,いくつかの題材の研究事例について述べてみたい。材料が決められた中であっても児童たちの題材に対する幅広い発想を促し,形や材料,機能性について思考させ,表現に結びつけることで,使うため,飾るために作ることの意義を感じ取らせるようにしたい。
(1) 木片を教材とした事例
木は,人間生活にとって地域性を問わず身近で親しみのある材料である。
しかし,質の良い板材や角材は高価であり教材として活用するには無理が多いが,建築会社や建具店の廃材である木片(写真1)は,容易に入手でき,このような木片でも木の香りがあり塊の手ごたえは,温かく心にせまるものがある。
児童たちに興味・関心を与えるであろうこれらの木片を生かした製作は,児童に適度の抵抗感を与えることができるので一層完成の充実感を得させることができるので,適切な教材となり得よう。
(2) 針金を教材とした事例
針金は線的表現材料として最も効果的といえよう。
なぜならば,鉄性の針金でも細く柔らかいものから,太くかたくて強い針金まで豊富に段階があり,またその他に銅性の針金やアルミ性の針金などの種類がある。このように針金といってもその性質は実に豊かであるからである。
そして,針金は,線的表現材料としてのみならず,針金を巻くことによって量を表わすことができる。そのように,幅の広い表現に向く針金は指導者のアイデアによって各学年の児童たちの興味をそそるすばらしい教材と成り得るものである。
(3) 割りばしを教材とした事例
割りばしは,一度使用されると捨てられてしまうが実に無駄なことをしていると思う。
しかし,「はし」としての機能を捨て利用することを考えれば,限られた資源を有効に生かすことができるのではないだろうか。そこで考えられるのが教材としての生かし方である。割りばしも生かし方によっては美しい形や,空間に成り得るのである。
また,割りばしを教材とすることは,廃材が児童の手によって再びよみがえることであり,実にすばらしいことである。そして,そのことが,使い捨ての風潮の中にあって児童たちの心情に及ぼす影響も見のがせないと考える。※ 木片・針金・割りばしを教材とした事例研究をPA7〜A11に示した。
なお,事例研究における「学習のねらい」の (心情) (造形) (技能) の分け方は,真鍋一男横浜国立大学教授を代表著者とする「新しい美術科の指導」の事例研究の中に示されているものを参考にした。