研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -032/071page
に利用。「クラブ活動における利用」,「数学の授業のための教材づくりなど教材研究をする際に利用」,「パソコンを教室にもちこみ,授業で利用」の順になっている。さきに触れたように,パソコンの台数が少ない現状であるが,その利用状況は良好といえよう。今後,台数が増えてくれば,数学の授業での利用がもっと多くなり,より有効な活用がなされると思われる。
(3) パソコン利用に対する数学科担当教師の意識数学を担当している教師は,数学科にパソコンが導入されていることに対してどのように考え,また,数学教育のなかでパソコンをどのように位置づけているのかについて調査した。
まず,「パソコンを数学の授業で利用する主なねらい」をどのように考えているのかについて選択回答法で回答を求めた。回答数の多い順に選択肢をあげてみると,「計算のしくみやアルゴリズムの学習をさせるため」と「数学(数学の学習)に対する興味・関心を喚起するため」がたいへん多く,いずれも6割以上の先生方が選択している。続いて「プログラミングを学習させるため」,「コンピュータの機構など計算機そのものを学習させるため」,「数学の学習をわかり易くするため」,「数学の学習をさらに深めるため」と続いている。
また,「数学科の授業でパソコンを利用することについて」自由回答法で意見を求めた。回答をまとめたなかから主なものをあげてみると,「パソコンの台数が少ない」,「数学演習室(パソコンの専用室)がほしい」,「同機種で性能がよいパソコンを備えたい」などであった。つまりパソコンそのものとその置き場所についての内容が多く,続いて「講習会など教師がパソコンに関して研修する機会がほしい」や「パソコンを授業で利用するためのソフトウェアの援助や情報交換の場がほしい」などの意見が多かった。
これらのことから,パソコンを数学の授業に活用しようとする数学担当教師の意気込みが感じられる。
3. 数学科におけるパソコンの活用
アンケート調査の結果からわかるように,数学科に配備されているパソコンは,よく利用されているといえよう。今後,設置台数の増加にしたがい,数学の授業におけるパソコンの活用法については,さらに一層の研究が必要であろう。
さきにみたように,各高校に配備されているパソコンの台数と「電子計算機と流れ図」を履習する生徒数とを考えたとき,パソコンの活用については,「数学II」における利用に限ることなく,他の数学の科目においても「必要に応じて計算機を使用させて学習の効果を高めるようにすること」に焦点を当て,パソコンの台数が少なくとも活用可能な利用のしかたを研究していくのが,現状では大切なことと考える。
さて,計算機が数学教育に導入されている主な目的は,計算機そのものについての学習よりは,数学における学習の効果を高める道具としてこれを活用することにあると思う。このような考え方に立ち,前述したような現状を考慮するとき,数学科におけるパソコンの活用のしかたとしては,パソコンを「教具として」活用することが効果的な使い方ではないだろうか。パソコンのもつ働きの特徴を生かし,従来の視聴覚機器にはなかった新しい教具として,利用法を工夫していくことは,学習指導上重要なことと思うのである。
パソコンを「教具として」活用することを考えるとき,次のような使い方があげられよう。一つは,パソコンによって,数値・数表・グラフなどを作成し,あるいはそれらを提示することがあろう。従来の指導法では,計算が複雑なため理論を主にして終えてしまった教材や,繁雑なために描くことを避けていたグラフなどについて,パソコンを活用することにより,学習の効果をより高められると思うのである。すなわち,生徒たちの教材に対する関心も高まり,理解も幅の広いものになり,さらには理解が深められていくことが期待されると思う。