研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -033/071page

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二つには,パソコンのもつ乱数発生の機能を利用し,実験器具の代わりとしての活用が考えられよう。確率関係の教材に関する学習では,効果的な利用がなされる場面がある。
 三つには,問題解決のための道具としての活用があろう。計算が複雑で理論だけで終わりがちであった教材については,パソコンのもつ迅速さを生かして,具体的な問題を解決するのに利用できよう。この場合,問題の取りあげ方によっては,数学の学習と現実の事象とを結びつけることにもなり,生徒たちの数学の学習に対する興味や関心も高められるのではないかと思われる。
 以上のように,パソコンを「教具として」活用することは,たとえパソコンの台数が少なくてもその活用は司能である。なお,この場合,プログラムは教師が作成し,生徒にはそれを作成する技能は必ずしも必要としない。従って,プログラミングの指導のために時間をさく必要はない。



4. 数学科におけるパソコンの活用例

 パソコンを「教具として」活用する場合について,その具体例を提示してみたい。ここで示す6例には,共通する二つの点がある。
 一つは,たとえ,パソコンの設置台数が1台であっても,授業に活用できる例であること,例えば,教師がパソコンを利用して数表やグラフを作成し,生徒に配布したそのコピーを,授業のなかで効果的に利用しようとするのである。この際,できるだけ生徒にデータを入力させ,数表やグラフを出力させたい。また,グラフの場合には,パソコンのディスプレイに描かれてくる点の動きをビデオにとり,大型のテレビ画面で生徒に提示するなどの工夫もあろう。
 二つには,いずれもパソコンの特性を生かして作成したもので,計算機を活用しない指導では,作成するのがむずかしいということである。
 なお,ここで使用したパソコンの機種は Personal Computer MZ-80B (SHARP) で,プログラム言語は BASIC を用いた。


(1) 事象の確率 −硬貨をなげる−
例1 パソコンの乱数発生機能を利用して硬貨を多数回なげる実験を行い,表の出る回数と表の出る割合を求め,表の出る確率を推定する。

[ ねらい ]
 硬貨を無作為になげるとき,表と裏の出方は同じであるように考えられるが,試行の結果か1/2になることはめったにない。パソコンの乱数を利用し多数回実験をかさね,そこに現れる規則性に気付かせ,「確率」の意味を理解させる手助けとしたい。
 「数学II」「確率・統計」の学習において「確率の導入」で扱うのが効果的であると思われる。

[ アルゴリズム ]
 パソコンが0と1との間の乱数を発生することを利用し,1枚の硬貨をなげるとき,乱数が1/2より小さいときは裏,そうでないときは表とする。実験回数Nを与え,表の出る回数Sと表の出る割合S/Nを求める。その流れ図は図1のようになる。

図 1
図 1

[ 計算の結果と考察 ]
 表1は,なげた回数Nと表の出た回数S,表の出た割合S/Nについての表で,パソコンにより作成したものである。
 Nが 100 から 1000 まででは,表の出る率が1/2を上下して振動が目立つが,Nが大きくなるにつれ1/2に近づき,しかもその値が安定してくることが観察できる。S/Nを小数第3位を四捨五入し小数第2位まで求めると, 0.50 となる割合は100 ≦ N ≦ 1000のとき 5/19


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