研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -035/071page
かのデータから結果を推定することはむずかしく危険であるということをわからせることによって,証明の意味・意義について理解させたい。
[ アルゴリズム ]
とおくと
Sn=Sn−1+1/I 2 ( n ≧ 1 ) ただしSo=0
したがって,図2でA(I)=1/I 2 とすると,その流れ図となる。なお,表2では階差を求めているので,表2を求めるプログラムの流れ図は,図2とはいくぶん異なる。[ 計算の結果と考察 ]
表2は,Nを100から3000まで100きざみに増加させ・部分和 の値の変化とその増加量(階差)を示したもので,パソコンで作成したものである。
表2からわかるように,N=1100からN=3000までは,和がいずれも 1.644・・・と小数第3位までは変わらない程度の増加であり,また,N=3000のときの和は 1.6446001 で,=2000のときの和と比べて,1千個の分数が加えられているにもかかわらず 0,0001664 だけ増加したにすぎない。このことから,Nを大きくしていっても和は2を越えることはないのではないかと推定されよう。その通りで,級数 (=1.6449・・・)に収束することがわかっている。一方 については,表3からわかるように,n=6000のときの部分和は 9.2768043 で,n=5900のときの部分和と比べて O.0168・・・の増加から推定すると,この先,nを大きくしても,ある有限の値を越えることはないように感覚的には思われる。しかし,これは正の無限大に発散する。この二つの級数 とを比較することにより,無限の世界のふしぎさ,神秘さのようなものを生徒が感じてくれるのではないか。そして証明することの意義をわかってくれるのではないかと思うのである。
極限は,その行きつく状態を考えるわけだが,いかなる経過をたどってそのような状態に達するかは,計算機の導入なしでは触れることができなかったといえよう。パソコンのこのような活用は,極限の概念を別の角度からとらえる手助けになるとも思うのである。