研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -063/071page
しかし,それ以外の項目も,OHPの効果的な利用によって,そのねらいを達成できるので,特に,情意面を育てるための利用の仕方などについては,工夫していかなければならないと考える。
(6) 市販TPの在庫量
OHPの効果的な利用は,ハードウェアとソフトウェアの両面の整備・充実があって,はじめて可能になる。
ソフト側の前提条件にある市販TPの在庫量を調べてみた。
設問6 市販TPの在庫量
あなたの学校に,市販TPは十分そろっていますか。
<表12> 市販TPの在庫量
学校 項目
小 学 校 中 学 校 十分ある 10.9% 12.4% もう少しあるとよい 43.5% 32.0% やや不足ぎみである 16.7% 11.3% 不足している 26.3% 40.7% その他 2.6% 3.6% [ 考察 ]
十分あると考えている先生は,小学校・中学校とも10%しかいない。不足している・不足ぎみであるをあわせると,小学校で43%,中学校で52%になる。もう少しあるとよいも含めて考えると,小学校・中学校ともTPの在庫量は少ないということになる。
市販TPの在庫量が少なければ,TPを自作すればよいわけであるが,TPの自作は,製作の時間の確保,材料などの問題から容易でないことを知っている。そのような意味からも,市販TPの不足は,OHPの利用状況を悪くしている要因と考えられる。市販TPを基礎的・基本的TPとして,それに手を加えたりしながら利用していく方法を考えていかないと,OHPは一部の教師だけが使うもの,あるいは,宝の持ちぐされといった状態が続くような気がする。市販TP利用の積み重ねが,TPの自作化へとつながるものと考える。
(7) 授業で利用するTPの種類
授業のねらいにせまるTPを,いかにして準備するかで,授業のよしあしが決まる。そのTPは,市販TPであっても,自作TPであってもかまわないわけであるが,先生方は,市販TPと自作TPをどの程度使用しているのかを調べてみた。
設問7 授業で利用するTPの種類
あなたが,授業で使用するときに使うTPは,自作TPと市販TPのどちらが多いですか。
<表13> 授業で利用するTPの種類
学校 項目
小 学 校 中 学 校 自作TPのみ 13.7% 30.3% 自作TPが主 34.1% 29.4% 自作・市販TP同じ程度 29.8% 18.9% 市販TPが主 19.9% 20.4% 市販TPのみ 1.9% 1.0% その他 0.6% 0.0% [ 考察 ]
自作TPのみを使用という先生は,小学校で14%,中学校で30%で,中学校の先生は,小学校の先生の2倍になっている。これに自作TPが主を加えると,小学校で48%,中学校で60%になる。 市販TPのみ・市販TPが主の先生は,小学校・中学校ともほぼ同じで,全体の約20%である。
このことから,大部分の先生方はTPを自作し,授業のねらいに応じて,自作TPのみ,あるいは自作TPと市販TPとの併用の型で使用していることを示している。
これは,<表11>からもわかるように,市販TPの在庫量が少ないこととも関係していると思われる。したがって,市販TPの在庫量を増やすことは,OHPの利用度を高める手っ取り早い方法であるが,実際に利用する時には,次のようなことに留意しておかなければならない。
市販TPは,出来映えの点では自作TPに勝っている。しかし,児童.生徒の実態をふまえ,授業