研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -066/071page
5. 課題解決の視点
OHPに関する調査結果について考察を試み,問題点及び課題を前ぺ一ジにまとめた。この課題の解決こそが,「わかる授業」,「できる授業」,「一人一人を生かす学習指導法」に結びつくものと考える。ここでは,調査結果をふまえながら,課題解決の方向について述べていきたい。
(1) OHPと他の教育機器の活用
それぞれの教育機器には,他に代えられない教育的機能と特性を有している。反面,それぞれが果たし得る範囲と果たし得ない限界を有している。それは,OHPも例外ではない。そのような立場に立った場合,目標達成のためには,どの機器が最適であるか検討されなければならない。そして,教育効果が最も期待できる学習過程に位置づける必要がある。そのためにも,できるだけ教材の収集や機器の司能性の検討を行い,教材・機器を精選し適切に位置づける工夫が大切である。
位置づけにあたっては,教材・機器の検討,指導の方法・手段の組み合わせ,児童生徒の実態などを考慮し,相互にその弱点を補い合い,教育的機能・特性がいっそう発揮できるような学習のシステム化を図るようにしたい。
教育機器の教育的機能・特性を熟知し,機器の操作にじゅうぶん馴れたからといって,これらの活用がはかれるとは限らない。活用の基本となるのは教科の研究でもある。教科の本質及び目標,単元や題材の目標・内容についての研究を深める必要がある。それらの分析を通して学習目標を達成するために,教材や教育機器の教育的機能をふまえた上で最適に組み合わせ,それぞれの特性を十分に発揮させることが真の活用につながる。
(2) OHPの整備・保管
整備の目安は,文部省の教材基準である。ここで示されたOHPの基準は,小・中学校ともに学校規模(学級)別に示されているが,実際の学級数より多い台数の購入が可能である。
一学級に一台は必要であることを示しているものといえる。この点から言えば,今後各学校とも,学級に一台を常備していつでも活用できるようにしていくことが望まれる。
これと同時に重要なことは,OHP本体以外の関連機材の整備・充実である。
スクリーン・拡大レンズ・TP作成機・予備球・市販TP・消耗品(TP自作の道具・材料)などを常に整備しておきたいものである。
これらのものが整備されて,はじめてOHPが機能するものである。
これらの整備に加えて,保守点検・保管がOHPの活用に欠かせない条件になってくる。
保守点検は,定期点検が基本となる。さらに日常の使用が点検そのものである。保守点検のために備えておき.たいものとして,掃除用具・点検器具(テスター)・修理工具がある。
保管は使い易さを最優先に考え,教室に常備することが望ましい。特に留意したいことは,すぐに利用でき,ほこりがつかないようにしておくことである。格納箱に入れたり,布製カバーを自作してかけておくようにするとよい。
使用にあたっては,教師のみでなく,児童生徒にも活用させる工夫をしてほしい。
(3) OHP活用の阻害要因
OHP活用の阻害要因としては,次の三点が考えられる。
○ 機器の準備・操作に関するもの
○ 教材の準備・学習指導に関するもの
○ 教師の意識に関するもの
機器の準備・操作に関するものでは,運搬・セットに要する時間や労カ的な負担である。
この点は,各学級に常備しておくことで解決できるが,台数不足の場合は,隣接学級との併用などが考えられる。操作については,校内研修を計画的に実施して向上をはかりたい。
教材の準備・学習指導に関するものは,市販TP・自作TPにかかわらず,学習のねらい・児童生徒の実態などを考慮して,学習指導における位置づけを明確にして使用しなければ,じゅうぶんな効果は期待できない。