研究紀要第55号 「学校経営改善に関する研究 第3年次」 -001/089page

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I 研 究 の 趣 旨

 近年,教育現場においては,学校経営とは,学校の教育目標達成のための計画−実施−評価という一貫した連続性のある経営サイクルをとおして絶えず組織の改善を図る活動であるという,いわゆるマネージメント・サイクルの考え方についての理解が深まり,実践的な取り組みがみられるようになった。教育現場のこのような動きについて,牧昌見氏は次のようにとらえている。「・・・学校経営の実践界において,プラン−ドウ−スィ−というマネージメント・サイクルの考え方がかなり普及してきた今日,これをばらばらにではなく一貫した連続性のあるプロセスとして,次のプランにフィードバックする実践をいかにして確保するかが課題となっている。このサイクルのパイプがどこでつまるのか,なぜつまるのか,どうすればスムーズに学校が運営できるのかを考えることの必要性が実践的に認識されてきたといえよう」
 学校経営をこのような計画−実施−評価という一連の経営サイクルとしてとらえようとする考え方は,とりもなおさず,学校経営の中核である教育課程の経営についても,マネージメント・サイクルの考え方や経営的発想で問い直すことが必要であると受けとめることができよう。すなわち,教育課程の計両・実施・評価の各過程を部分的・断片的にとらえがちだったこれまでの考え方や実践から,計画−実施−評価,更には次の計画改善へと発展していく一連の経営サイクルとして,全体的・総合的にとらえ,各過程間のダイナミックな動きを重視しようとする考え方に変わってきているのである。
 特に,現在の教育課程の基準の改善に関する答申の中で強く求められている,主体的な学校経営の確立,各学校の自発的・創造的な教育活動の展開による教育課程実施の効果は,このマネージメント・サイクルの考え方に基づき教育課程の経営が行われてはじめて期待できるのである。

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 教育現場における教育課程の展開とその効果に焦点を当て,マネージメント・サイクルの考え方や経営的発想に基づいて現状を見直した場合,後述するような多くの問題点があげられる。特に教育課程編成の計画の過程についての各学校の実践は積極的であり,学校教育の向上に実質的な役割を果たしているが,この計画過程に比べて,計画を実践に生かしたり,実施状沢を評価して次の計画改善に反映させるということについては,まだ十分な取り組みがなされているとはいえず,検討の余地が残されているようである。
 このような教育現場の現状について,伊藤和衛氏も次のように指摘している。
 「おおまかにいって,教育課程の管理は,その計画管理,実施段階における授業管理,そして評価管理のどれひとつをとってみても,近代管理としてのマネージメント・サイクルに合致していないというべきであろう。すなわち,計画と実施,実施と評価,評価と計画,これらの各段階には深い絶断がある。したがって,教育そのものが効率化しないわけである。・・・・・特に,教育課程の管理においては,評価管理が有効適切にはたらいていなければならないのに,学校管理の現実においては,この点が"ゼロ"に近いといえるだろう。」このことは今日の教育現場の教育課程経営の課題ともいえよう。
 教育課程編成の計画過程にのみ全力を傾注しても,授業を中心とするすべての教育活動の実施の過程,更には評価に基づく具体的な改善策を生み


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