研究紀要第55号 「学校経営改善に関する研究 第3年次」 -002/089page
だす過程をおろそかにしては,創意ある教育課程の計画改善は望めず,ひいては,学校教育の質的充実も教育の実質的効果も期待できない。
本研究の意図は,教育課程の経営が上述のようにマネージメント・サイクルによって展開されない学校が多いという現状にどのようにこたえるかというところにある。教育課程の経営をマネージメント・サイクルに乗せるということは,伊藤和衛氏が述べているように,「プランニングされた教育課程が実際に組織的活動として一時間一時間の教育活動に展開されることであり,同時にそれが評価機能をとおしてまた教育課程−教育計画にフィードバックされること」である。目標を定めて計画をたて,計画に基づいて実施に移し,その結果を目標にてらして評価する。そして,この評価は,また次の計画にはねかえられなければならない。このような考え方は,一つ一つの単元にも,おのおのの教科・領域にも,教育課程全体にもある。この計画−実施−評価の日常的な積み重ねこそが,やがて教育課程の改善・充実につながっていくのである。教育課程経営の今日的課題がこのマネージメント・サイクルの考え方によりその実際を見直すところにある。本研究は,この見直すための手がかりを教育現場に提供することを目的として進めてきたものである。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
教育課程の経営をマネージメント・サイクルに乗せ,その機能を十分に発揮させるためには,現実的には実施−評価,評価−計画の過程に具体的にどのように取り組むかにかかっている。
その解決には,各学校の教育課程の展開と効栗の判断に役立つ評価用具の開発が必要であるが,このことについては,研究協カ校を対象として行った訪問調査や実態調査で,教育現場から強く要望された点である。教育課程の評価は,次の教育課程−教育計画改善に直接かかわる問題であり,慎重な態度で取り組まなければならないという評価の意義と必要性は十分理解していても,総合的・客観的な評価活動を展開するための評価用具がないため,形式的な評価にとどまり計画改善に結びつかないというのが教育現場の実情のようである。したがって教育課程経営のための客観性のある評価用具の開発が教育現場より多く望まれているならば,この要望にこたえるためにも,教育現場の各学校に広く活用される実用的な教育課程評価票(試案)など評価用具の開発が必要であるという課題意識をもち,研究の方向を見定めたのである。
まとめていうならば本研究の主たるねらいは,教育課程経営の質的改善を目指すための経営的発想に基づく理論的・実践的究明にある。しかし,具体的なねらいは,教育課程評価票(試案)をはじめとして教育現場の各学校に活用される評価用具の開発にあるのである。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
以上の研究のねらいを達成するために,本研究は昭和56年より昭和58年にわたる3年間を研究期間とし,次の3点を研究の主軸として研究を進めてきた。
○教育課程経営に関する文献研究をとおし,基本的事項についての理論をまとめる。
○教育課程評価票(試案)及び教育課程経営の実践に生きる評価用具を開発する。
○県内小・中学校より選定した研究協カ校より教育課程経営の実践上の資料を収集し,具体的資料として整理し,各学校に紹介する。