研究紀要第55号 「学校経営改善に関する研究 第3年次」 -007/089page
につながることになるので,学校経営における本質的な機能を,目標系列と条件系列におさえ,教育活動と経営活動を統合的に把握することにより学校経営の機能や領域を構造的にとらえることが大切である。
(3)教育課程経営の位置づけ
教育課程は,学校教育の目的・目標を達成するために,教育の内容を児童生徒の心身の発達に応じ,授業時数との関連において,統合的に組織した学校の教育計画であると定義されている。このような定義によるまでもなく,学校教育本来の目的を考えた場合,一人一人の児童生徒に対し,教育目標の実現を目指して行われる教育課程の経営が,学校経営の中核であることは当然理解できることである。
このことについて,安彦忠彦氏は次のように述べている。
「・・・・・教育課程の経営は,図2に示すように学校経営の一部に過ぎないが,それは他の部分の経営活動とは異なり,図3にあらわされるように直接に教授・学習活動を規定する経営活動である。この意味で,教育課程の経営が学校経営活動の中核に位置づけられ,すべての経営活動が自覚的にそれに向けて焦点づけられていることが必要なのである。」
本研究を進めるに当たっては,このような考え方を参考にし,教育課程経営の位置づけについて次のようにとらえた。
教育課程の経営は,学校経営の中核として,学校経営内におけるあらゆる活動と密接にかかわりあいながらも,しかもその要となる役割をになうものである。それはまた,教育課程経営が,学校経営の一環として,総合的・全体的に推進される作用であるということでもある。
2 教育課程経営の意義・機能
教育課程の展開を意味するものとして,「教育課程の管理」とともに「教育課程の経営」などの用語が一般的に多く用いられている。そこで,本研究では,先に述べた学校経嘗の意義や機能にてらして,これらに関する諸説に共通した基本的な考え方に基づきながら,管理と経営について吟味し,教育課程経宮の意義・機能や動態的な教育課程経営観などを明らかにしたい。
(1) 教育課程の「経営」と「管理」
教育課程の展開に関する用語について考えてみると,左に述べたように,「教育課程の管理」と「教育課程の経営」の二つを挙げることができるが,教育課程経営の意義と機能を解明するということから考えた場合,いずれの説にもおのずと相通ずるものがあると思われる。したがって,これらにかかわる諸説の主なるものを例よしてあげ「経営」と「管理」について吟味し,その概念をおさえていくことにする。