研究紀要第55号 「学校経営改善に関する研究 第3年次」 -010/089page
学校教育の効果を高める働きと言うことができる。
(3) 動態的な教育課程経営論
これまでは主として学校経営現代化の一つの視点である教育的機能面からの見直しにより,教育課程経営の意義や機能について述べてきたが,ここで,もう一つの視点である動態的経営観から教育課程経営を見直してみると,次の二つの観点からおさえることができる。1.PDSの連続過程でとらえ直すこと。
教育課程を編成・計画のみの部分的・断片的なとらえ方でのみ考えず,学校経営過程の計画,実施,評価と同様に,PDSの過程としてとらえ直して考えることである。すなわち,教育課程の編成−実施−評価を連続する教育活動の過程として全体的,総合的にとらえ,学校教育の中核として位置づけて考え,編成−実施だけでなくその効果までも含め,PDSのマネージメント・サイクルに合致させて経営することである。特に,P-D-Sの各過程と,P-D,D-S,S-P'の間を具体的にどうするカ)を教育課程の展開に即して考えることである。2.PDSの因果関係でとらえ直すこと。
時間の流れに沿って連続して展開される教育活動としての教育課程のPDSが,常に教育目標や経営方針・教育方針,並びに教育課程編成の基本方針などにコントロールされるという考え方でとらえ直すことである。すなわち,結果志向の考え方を重視することであり,教育課程のPDSを因果関係でとらえ直すことである。特にS-P’の過程を重視し,総合的・客観的な評価に基づく資料により,教育目標などに照らし.何が成果として実現され,何が次年度の課題なのかを明らかにして次年度の計画改善へ具体的に組み入れることである。このように,二つの観点から教育課程のPDSをとらえ直したとき,初めて動態的な教育課程の経営が可能になると考えられるが,要は,常に目標達成を目指して調整,コントロールされる経営活動に支えられながら,日々の授業や教育活動がP-D-S-P'の過程に乗って連続的にダイナミックに展開され,学校教育の効果が高まることであるとまとめることができよう。
(4) 経営的発想に基づく教育課程経営の見直し
教育課程の動態的把握を土台にすえ,経営的発想の視点から教育課程を考えた場合,経営過程を生かすためには,組織的活動の面,計画的活動の面,並びに調整的機能の面から見直すことが大切である。これらの経営的発想に基づく教育課程の見直しの三つの観点について,教育課程のPDSに関連する具体的な見直しの項目を観点ごとにあげて説明を加え,表にまとめると次のようになる。
観点 項目 内 容 組織化
(組織的
活動)全員参加
の組織学校の教育目標は,全教職員の主体的な経営参加によって,能率的・効果的な達成が期待できる。教育課程のPDSの各過程におけるあらゆる組織づくりに当たっては,この主体的な経営参加と全員参加の二点について最も配慮しなければならない。 機能的組織 経営組織は,目標達成を目指して機能的に働かなければならない。そのための組織は,運営しやすく,その時,その時における課題に十分対処できる柔軟性に富むことが必要である。教育課程経営における組織づくりは,簡単にして要をつくしていなければならない。 計画化 見通しのある計画 計画 (plan) は,ややもすれば,PDSのPの過程における計画,あるいは,そのための作用・活動にのみ限定されてとらえられがちである。しかし,教育課程経営における計画は,実施・評価の各過程にまで及ぶ計画でなければならない。