研究紀要第55号 「学校経営改善に関する研究 第3年次」 -012/089page
ものと言えよう。
2.学校経営上の今日的課題として −本研究とのかかわり−
本研究では,教育課程経営とは,教育課程をマネージメント・サイクルの流れによって,計画的・組織的に展開する学校教育の働きであるととらえた。しかし,教育現場における教育課程経営の実際は,P-D-Sから更に次のP'へとの流れに乗った円環的な展開が行われず,各過程の間には断絶があるということが,第一年次,第二年次の調査から,小中学校ともに指摘できる。すなわち教育課程の編成・実施の両過程に比べ,評価過程及び,評価の結果を改善に結びつける過程に多くの問題があると言える。
教育課程評価・改善に対する教職員の意識,評価のための組織編成,評価計画の立案,具体的な評価の方法,評価結果の活用など,教育現場における教育課程に関する問題は多様である。しかし,先に評価から改善に至る過程のはたらきこそが,教育課程がマネージメント・サイクルにのってダイナミックに働くかどうかの鍵であると述べたように,これら一連の問題について各教育現場が自校の現状をどう切り開いていくかが教育課程経営の課題と言えよう。
本研究が,教育課程の中で,この評価から改善に至る過程に焦点を当て研究を進めてきたのも,このことが学校教育の質的改善を目指す教育課程の経営にとって最も今日的課題であると考えたからに他ならない。(2) 教育課程評価のねらい
創意を加えて編成・実施した教育課程を更に充実させ,改善を図るためには,適切な評価を行う必要がある。この教育課程評価のねらいについて吟味してみる。1.教育課程経営の現状と課題
教育現場においては,教育課程の経営をマネージメント・サイクルの考え方でとらえようとする理解は深まりつつあるが,教育課程経営の実際においては,円環的なPDSの経営過程としてではなく,各過程を部分的・断片的にみているということが,一・二年次の調査から明らかになった。
評価過程の問題点については前にも述べたが,各学校においては,これら問題の要因を自校の実状から分析し,一つ一つを地道に解決していこうとする取り組みが見られない限り,創意ある教育課程の経営は望めないものと思われる。教育課程評価は,次年度の教育課程の編成・実施に直接かかわる問題だけに,編成・実施の過程にもまして慎重な態度で取り組み,改善のための資料が十分得られるよう意図的・計画的な評価活動を展開しなげればならない。このような教育課程経営の現状から評価の意義やその必要性も容易に理解できよう。2.教育課程の弾力的運用
教育現場の実態を見るとき,教育課程の編成作業は,全校をあげて相当のエネルギーと時間を投入して行われるが,いったんでき上った教育課程は固定化され易い傾向にある。しかし,教育課程は学校の最も基本となる教育計画であるので,その実施過程のすべてにおいて,学校の教育目標や編成の基本方針に照らし,適時評価が行われ,その結果に基づき計画の改善を行い,教育の効果を一層高めなければならない。すなわち,教育課程を弾力的に運用するためには,適切な評価が適宜行われることが必要なのである。教育課程の基準の改善における答申の中で期待している教育課程の弾力化も,このことを意味しているのであり,教育課程を固定化しないで,常に適切なあり方を求めて改善を図っていかなければならないと言える。このように,教育課程を弾力的に運用していくためには,適切な評価が適宜行われることが必要なのである。以上の二点から教育課程評価のねらいは,評価活動や評価結果そのものを問題としているのではなく,評価の過程や評価の結果得られた資料を,次の計画改善や次年度の教育課程の編成にいかに結びつけて,評価の効果を発揮させるかというところにあると言えよう。