研究紀要第55号 「学校経営改善に関する研究 第3年次」 -013/089page

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(3) 教育課程評価の周辺

 本研究における教育課程評価の考え方をより明確にし,理論的な基盤を構築するためには,教育課程評価の周辺にかかわる問題を解明しておくことが必要と考えられる。ここでは,「教育評価」と「アカウンタビリテイ(accountability)」について述べることにする。


1.教育評価の考え方
 教育評価という言葉が広義に用いられる場合は,教育活動のすべての面における評価のことを意味し,教育活動の立案と推進に直接的あるいは間接的に関連した各種の実態把握と価値判断のすべてを含むものと解されるのが普通である。したがって,そのような意味における教育評価の対象は,教育活動に関連をもつすべてのものとなる。それらのうち主要なものを中核的なものから周辺的なものへと整理すると,6つの水準と13の対象に分けられる。

水準 対象
1.児童生徒個々人
2.教育活動
3.カリキュラム

4.教師

5.児童生徒集団

6.教師を含めた学級

7.教師集団

8.学校全体のあり方

9.基本的施設

10.校地及び校舎

11.地域的環境

12.教育システム

13.全体社会における学校の位置と機能


 教育の最終目標が児童生徒個人の成長・発達にかかわることからしても,これらの評価対象のうち児童生徒の評価が最優先することは自明のことである。教育評価を狭義に用いる場合には,この児童生徒の評価を指すのが普通であり,その意味において,児童生徒の評価は教育評価の最も中核に位置するものである。


2.アカウンタビリテイ(accountability) −教育成果報告責任の考え方−
 この考えは,近年のアメリカにおける教育評価を特色づけている思想である。すなわち、学校の当事者は自分たちの行っている教育計画がどれだけの成果をあげているかを,教育の主権者であり納税者である市民に報告する責任があるという考え方であり,このような思想が高まってきた理由としては次のことがあげられよう。

ア 昨今教育費が増大しているが,それがどれだけの成果をあげているかを知りたいという社会の関心の高まり

イ 新しく金のかかる教育計画が開発されるがそれが本当に児童生徒たちに力をつけているのだろうかとの疑問

ウ 学校が優秀な児童生徒だけでなく,大部分の児童生徒の学習を成功させているかどうか落ちこぼしてはいないかの関心

工 これまで学習の失敗はその児童生徒に負わされたが,近年,学校や教師にも責任があるという考え方の浸透

オ 教育管理者が,教育予算の配分や設備の整備を行うに当たって,成果についての情報の必要性

 わが国においては,このアカウンタビリテイの考えは,現在までのところほとんど問題にされていないのが現状である。しかし、教育評価には,学校・地域・府県・国の現在の教育成果を,市民や国民に報告して,その知る権利にこたえなければならないという重要な目的をもつもつである。


3.二つの考え方と教育課程評価
 教育課程評価に関する基本的な考え方に基づいて教育評偏及びアカウンタビリテイの考え方を問い直した場合,授業を中心にすえ,教育課程の適否や教育成果に焦点を当てている面では,同じ方向性をもつと考えられる。特に狭義の教育評価における児童生徒の評価優先の考え方や,アカウンタビリテイにおける教育成果と教育計画との関連重視の考え方は,教育課程評価が,教育課程の改善を最終のねらいとして行われるという考え方と十分合致するものと言える。
 ただ,教育評価も教育成果報告責任も,終局的には目標達成の有無が問題であり,そこには当然目標達成の評価と同時に,児童生徒の学力・行動の評価が重要になってくる。


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