研究紀要第55号 「学校経営改善に関する研究 第3年次」 -014/089page
しかし,教育課程評価はあくまでも教育課程の編成・実施をより適切にするための資料を得て,改善の方向を明らかにしその方策をたてることにあるのであり,また教育目標達成評価も,児童生徒の学カ・行動の評価も,教育成果の報告責任というよりは,評価の結果を次の教育課程編成にどう生かし,授業の実際に直接かかわる指導計画や指導方法の改善にどう結びつけていくかという考え方でとらえていくことが大切になってくる。
これまで述べてきたことを本研究の立場からまとめると,狭義の教育評価やアカウンタビリテイの考え方は生かすとしても,それを個々の児童生徒の学力・行勃の評価や評定としてのみはとらえず,それらの評価の結果がトータルされたものとしてとらえ直すことが肝要である。したがって,本研究における教育課程評価では,個々の児童生徒の学カ・行動の評価・評定などは評価対象から除き,それらの資料が学級・学年・学校単位でまとめられ,しかも教育課程改善のための資料として活用できる評価結果のみを評価対象とすることになる。
このとらえ方は.奥田真丈氏が「教育課程評価は,個々の児童生徒の教育決定ではなく,すべての児童生徒や学級・学年・学校に共通にかかわる教育内容・方法に関する選択・決定を下すことに関連している」と述べている教育課程評価の特質に合致するものである。
(4) 経営的発想に基づく教育課程評価
これまで,教育課程評イ刑こついて,その概念や周辺の二つの問題を取り上げながら論を進めてきた。ここでは更に,本研究における教育課程評価の特色を明確にさせるために,教育課程経営と教育課程評価との関連や,経営的発想に基づく評価における重視すべき事項について述べる。1.教育課程経営に即した評価の考え方
教育課程の経営を,編成−実施−評価−更新計画へと円環的に展開していく連続性の経営過程とおさえるならば,教育諜程の評価もまた,それぞれの過程においてなされなければ,経営的な発想に基づく評価の機能は生かされないことになる。
計画−実施−評価の各過程がそれぞれ個別に一つの過程としてのみとらえられるだけでなく,計画−実施−評柵そして改善された更新計画に至る一連の経営過程の中で,相互関連的にとらえられ,常に評価の機能が生かされなければならないのである。
教育課程を編成するということは、単に教育計画のみを作成するというのではなく,編成(P)の過程でいかに実施(D),評価(S)の過程を考え,それを計画に具体的にどう表わすかということになるのである。
このように教育課程を経営的な発想から再確認したとき,教育課程のPDSは,Pの過程ではDSの活動が予測され,Dの過程でもPSが含まれSの過程でもPDが志向されていることになる。
すなわち,編成過程(P)において評価活動を配慮しなければ評価の実際ではその効果が発揮されないと同様に,評価過程(S)においても,教育課程の改善・充実を見通した評価活動が行われない限り次年度の教育課程は適正なものに更新されず,経営的発想に基づく評価にはなり得ないことになる。これは実施過程(D)においても同様であり,教育課程がどう実施され,どのような効果をあげ得たかは評価過程であらためて調べるのではなく,実施過程においても常時評価が行われてこそ,評価の実効が期待できるのである。
2.経営的発想に基づく評価の特色
本研究における教育課程評価の特色を浮きぼりにするには,この経営的発想に即して重視すべき事項をおさえることが肝要であり,以下それらについて述べる。ア 経営過程の重視
評価対象を部分的にとらえて個々に評価するのではなく,P-D-Sの経営過程の中に位置づけて,それぞれの評価対象ごとの教育課程実施の実態をとらえ,次年度の教育課程改善の資料として生かせる評価でなければならない。すなわち,教育課程の経営がP-D-S-P'と猛環的・発展的につながりを持つことにより,評価の機能が一層生かされるのである。同時に,