研究紀要第55号 「学校経営改善に関する研究 第3年次」 -015/089page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

各対象ごとのP-D-Sの評価結果が,教育課程経営全体のPDSの評価に深くかかわることにより,教育課程経営の巨視的・動態的な評価が可能になるのである。
 例えば,教育目標の具現化を目指す重点目標が,具体的な年間指導計画や学級経営計画にまでどのように連動し,それらの計画が日々の授業にどのように結びつき,その成果がどう評価され,それが計画の改善にどう生かされたかを各対象ごとに評価するだけでなく,連続した教育活動として相互的・関連的に評価することが大切なのである。

イ 目標系列の重視
 教育課程評価は,個々の授業が有効に進められるために目標系列と条件系列が有機的に関連づけられ,どのように目標達成へ迫ったかを診断することであると論じてきた。このように,教育課程評価本来の機能を,教育目標−教育課程−日々の授業という一連の目標系列を条件系列とのかかわりの中でPDSの経営過程に即してとらえ直すことであると考えるならば,この目標系列に属する教育活動をどう評価するかは,ますます重視されなければならない。
 教育目標に照らして,目標系列に属する教育活動の実際を,結果志向の考え方で評価・診断し,充実・改善を図る方向で教育課程評価を考えていきたい。

ウ 評価機能の重視
 教育課程の評価というと,一般的には年度末の総合的な評価としてとらえられることが多いが,それだけでは,結果としての評価は可能であるにしても,教育課程経営の具体的な動きに即したそのときどきの実態把握は希薄になりやすい。
 すなわち,教育課程の最も中核となる日々の授業に対する反省・評価の瞥料が,指導計画や指導法の改善に生かされないことになる。
 教育課程評価も教育評価一般において考えられている形成的評価の考え方が大切になってきている。形成的評価においては,結果としての評価だけでなく,学習のプロセスや各段階ごとの評価や確かめにより,授業や学習活動の改善に大きな成果をあげている。教育課程評価においても,このような考え方を援用して教育課程改善の効果を高めることが必要である。


4 教育課程の改善

 学習指導要領によれば,各学校においては創意工夫を加えた教育課程の編成・実施が期待されている。したがって,各学校における教育課程の改善については,これまで以上に全教師が協力し組織的・計画的に一層改善に努めなければならない。
 ここでは,この点をふまえて,教育課程の改善について述べることにする。

(1) 教育課程の現代的なとらえ方と改善の必要性
 現代の教育課程の特徴を把握する上で考えられることは,教育課程を固定的に見ないで柔軟に見ていこうとする考え方である。
 それは,学校の教育目標,各教科,領域などの指導内容,指導計画,授業時数,更には教育組織や運営などについて,社会生活や文化の状況の変化及び児童生徒の変容の実態を直視しながら,それに即応したより適切なあり方を求めて,弾力的に改善を図っていこうとすることである。
 このような現代の教育課程のとらえ方の特徴は,この度の学習指導要領の改訂にも強く反映されている。
 教育課程の基準の改善に関する答申の中に「・・・・・各学校における教育が,創意を生かし,それぞれの地域や児童生徒の実態に即して適切に行われるように,教育課程の弾力化が一層図られなければならない。」,とある。このことは,教育課程が,これまでとかく固定的に見られがちだった考え方から,弾力的に幅広くとらえようとすることを意味するものと言える。
 このように,教育課程を柔軟性,弾力性をもったものとみるとらえ方が現代の教育課程把握の特徴であり,この考え方が強くなればなる程教育課


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。