研究紀要第55号 「学校経営改善に関する研究 第3年次」 -021/089page
IV 教育課程評価用具の開発
1 教育課程評価の構想
前章において,本研究の目指す教育課程評価の特色・方向をおさえてきたが,ここでは教育課程評価票(試案)の開発をどのように進めたか,その具体的な構想について述べることにする。
(1) 教育課程評価の対象・範囲
教育課程評価を具体的かつ効果的に行う評価用具の開発に当たって,はじめに問題となることは教育課程評価の対象・範囲の決定である。ここでは,これについての一般的な考え方及び本研究の考え方を述べてみる。
1.教育課程評価対象・範囲の一般的な考え方
教育課程評価は,教育課程の実施・展開の過程すべてを評価の対象・範囲とするものであるとされるが,特に直接の評価対象・範囲として,欠かすことのできないものをあげる。○子どもの学力・能力・行動特性・態度・性格
○教師の指導活動
○子どもの学習活動
○授業の背景的要因しかし,この評価対象・範用の中でも,第一にあげた児童生徒自身にかかわるものは,評価対象範囲というより,むしろ教育課程評価の手がかり,手段,指標としてとらえなければならない。
すなわち,個々の児董生徒が教育活動をとおして獲得する教育目標の達成状況や教育成果・学習成果としての学力・行動などの結果や評定は対象範囲に含めず,学級・学年など,集団を対象とした教育計画や指導方洪などについては評価の対象・範囲とする。
2.教育課程評価目的による評価対象・範囲の決定
文部省指導書「教育課程評価の対象は,教育課程の編成から,各教科,道徳及び特別活動における指導計画,指導方法などに及ぶものであり,更に,編成・実施に関する運営上の配慮をも評価の対象とする。」
文部省小学校教育課程一般指導資料
「教育課程評価の対象と観点は,広範かつ多角的であるので,まず何のために教育課程の評価を行うかという評価の目的を明確にし,この目的に即して評価の対象と観点を定める必要がある。」
この考え方によると,それぞれの学校の教育課程評価の目的に応じて,教育課程の評価の対象や観点は決められるべきものであり,更にそれは実際に評価する段階で決められるものでばなく,年度当初,評価計画に位置づけるなどして明らかにしておくことを意味するものである。
3.本研究における評価の対象・範囲の考え方
−目標系列の教育活動の軍視−
これまで,教育課程評価の対象・節囲についての一般的な考え方を述べてきたが,ここでは,それらの考え方に基づきながら,本研究での評価対象・範囲の基本的な考え方をおさえることにする。先に,教育課程評価は,目標系列の教育活動にそれを支える条件系列の経営活動と有機的な関連を図りながら,ダイナミックなPDSとして計画的・組織的に展開し,その機能がいかに発揮し下いるかを診断・評価することであるととらえた。
本研究においては,この考え方に立って,教育課程評価の対象・範囲を決めることにした。学校教育本来の目的は,教育目標から授業に至る教育活動の効果を高めることであり,これは,教育課程の実施・展開そのものである。したがって,本研究での教育課程評価の中心は,目標系列に属する教育計画,授業などの教育活動や教育機能そのものであるとおさえることができる。