研究紀要第55号 「学校経営改善に関する研究 第3年次」 -045/089page
V 研究のまとめ
1 研究のまとめ
当教育センターでは,昭和56年度から3か年にわたり,研究プロジェクトチームを組み,学校経営の改善に関する研究の一環として「教育課程の経営に関する研究」を進めてきたが,本研究紀要の発行をもって,この調査研究も終了する運びとなった。
本研究は,学校経営におけるP-D-Sの考え方の重視と同様に,学校経営の中核である教育課程の経営についても,このマネージメント・サイクルの考え方を基底とする動態的な経営観にたって現状を見直すことが必要であるとして,そのための手がかりを教育現場に提供し,学校教育の質的な改善・充実を期待するものであった。
この考えに基づいて,第1,2年次に県下の小中学校の研究協力校に対し訪問調査や実態調査などを通じて調査研究を進めたところ,教育課程の経営上,評価から改善に至る過程への積極的な取り組みが今日的課題であることがわかった。またその課題解決のための一つとして,総合的・客観的な教育課程評価用具としての評価票の開発が教育現場から最も強く要請されていることが確認された。
第2年次は,このことをふまえた研究の構想に基づき,教育課程の評価を中心に研究を推進してきた。教育課程評価をどのように行うかは,各学校の教育課程経営のかかえる問題点や評価の目的により異なるので,評価用具の一つとしての教育課程評価票も,基本的には各学校の主体的な研究により,その学校の実情に即して作成されることが望ましい。しかし,教育課程改善につながる実践的な教育課程評価票を,各学校がそれぞれ作成することは,教育現場の現状からして容易ではなく,このことが,実際の評柵活動を阻害していたとも言えるのである。
本研究プロジェクトは,教育課程経営の改善に役立ち,教育現場の主体的な評価活動に活用される実用的な教育課程評価票の開発が必要であるという課題意識をもち,研究の方向を見定め,教育課程経営上の諸問題解決の有効な資料となる評価票(試案)開発を目指しての研究に着手した。
すなわち,教育課程評価に関する基本的事項の解明,教育現場における教育課程評価に関する実態把握,そして,教育課程評価票(試案)の素案作成と研究協カ校などにおける試行を3本の柱として進めた。
第3年次である本年度は,次の三つの柱を中核として研究を進め,三年間にわたる本研究のまとめを行った。
すなわち,第1・2年次の教育課程経営に関する理論を整理して墓本的事項を確立すること,教育課程評価票(試案)の素案試行に対する研究協力校などからの実践状況調査報告に基づく内容の検討と改善により.教育課程評価票(試案)を完成すること,並びに研究協力校からの教育課程経営の実際に関する実践事例の収集により,紹介資料を作成することの三つであった。
2 研究の成果
教育現場における教育課程経営上の課題を,「動態的経営」,「教職員の経営参加」,「教育課程評価票(試案)」の三点におさえ,これに理論と実際との融合を目指して本研究を進めてきた。3年間にわたる研究の成果として,これまでの研究内容を本紀要に要約,整理してみたが,研究の基盤としての理論研究と教育課程評価票(試案)の開発に当たって明らかになったことを項目的にまとめてみると次のとおりである。