研究紀要第55号 「学校経営改善に関する研究 第3年次」 -047/089page
3 今後の課題
本研究は,学校経営の中核としての教育課程経営について,マネージメント・サイクルの考え方や経営的発想に基づき,そのあり方を,理論研究と県内小・中学校における実際を実証的に追究してきたものである。3年間にわたる研究のあしあとをふりかえり,本研究に残された課題をまとめてみる。
○ 教育現場の教育課程経営の実際は,マネージメント・サイクルに乗らず,P-D-S-P'の各過程間に、断絶があることは実態調査により明らかにされても,その断絶をどう埋めるかは文献による理論研究で解明することはできない。したがって,この解決のための実践・に結びつく有効な事例・資料をより多く収集していかなければならない。
○ 経営的発想に基づき教育課程経営の実際を見直す観点として「組織化」,「計画化」,「調整化」の三点をとりあげたが (紀要第45号詳記) ,これを更に教育課程経営の実際に照応して具体的に深めていけば,教育現場における問題点の対策・改善のための視点に結びつくであろう。
○ 本研究では,児童生徒の学力・行動などの評価や評定を評価対象から除いたことは教育課程評価の特質から考えて当然であるが,これを教育課程改善のための資料として生かすため,学級・学年・学校の単位でまとめる具体的な手だてを講じる必要がある。児童生徒の学力・行動の評価や教育目標達成度の評価こそ,教育課程改善の根底になければならないからである。
○ 本研究で開発した「教育課程評価票(試案)」の実用性・妥当性については,研究協力校における試行調査により検証したつもりであるが,評価対象・要素の設定・観点の表現など教育現場の各学校に対するより広い一般化の点から検討・改善の余地が多く残されている。
○ 教育課程の評価が年度末の評価だけに終わることなく,実際の指導計画や指導方法の改善につながるよう日常の評価活動を重視し,評価機能発揮のための評価用具も資料として紹介しているが,教育現場の各学校・教師一人一人の実践に最も生きるものと考える。今後とも継続してこのような事例・資料を収集していくことが大切である。
○ 本紀要及び「教育課程評価票(試案)」が県下の各学校において今後広く活用され,その実践状況の報告などをとおして更に新しい課題をさぐるとともに,教育課程経営,特に教育課程評価をめぐる諸問題について,長期的・継続的に調査研究を進めていくことが必要であろう。
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本研究は,学校経営改善に関する研究の一環として,昭和53年度からの「学校経営評価に関する研究」に次ぐ「教育課程の経営に関する研究」であった。今,本研究紀要の発行をもって本研究を終了するに当たり明らかにされたことは,教育的機能の促進と動態的な経営観を重視する学校経営現代化の視点から教育課程の経営をとらえるならば,学校の教育目標−教育課程−日々の授業をPDSのマネージメント・サイクルに沿ってとらえ直すことが課題であるということである。各学校の教育目標が日々の授業や個々の教育活動に生きてはたらくためにはどうすべきか,そのための教育課程−教育計画はどうあるべきかなど,学校の教育目標と教育課程とのかかわりを更に深く追究していくことがこれまでの二つの研究を通じて,残された課題であるといえる。この課題究明をもって,これまでの二つの研究と合わせて学校経営改善に関する研究の三部作とし,集大成を図る方向で今後吟味していく計画である。