研究紀要第56号 「学習指導と評価に関する研究 第1年次・実態調査」 -041/053page
ている。このことからもわかるように,各教師の評価についての関心は,さらに高まっているようである。しかし,その多くが,「評価の観点や方法を具体的に位置づけてはいない」と答えているように,なお問題も多いように思われる。例えば,目由記述の中で,「目標分析の手だて,方法がわからないため,評価が思うようにできないでいる」,「評価についての研究が不十分であるため,評価結果の活用の方法や手だてがわからない」などと述べているように,評価の大切さは,十分承知しているが,その具体的な方法・手段・手だてがわからないため,どうしたらよいかとまどっているというのが,実情のようである。
そこで,各学校においては,評価の理論研究もさることながら,評価の手段,方法,手だてなどに関する実践的研究を進めていくことが,今後強く望まれよう。
(2) 形成的評価の重視
教育評価活動に対する取り組みの意識が高まってきていることは,好ましいことである。ところで,評価というと,ともすれば,総括的評価にウェートをおきがちで,指導過程における評価,つまり,形成的評価がおろそかにされてきてはいないだろうか。学校は公教育の機関として,どの児童生徒にもある一定レベルの学カだけは保障する責任があるわけである。これを,形成的評価によって,現実に可能なものにしようとするのである。つまり,形成的評価を重視することにより,授業展開や指導計画を児童生徒の反応や目標達成状況を確認しながら,最適なものへと修正し,改善していくものである。
本調査結果でも,これを何らかのかたちで行っている教師は,80%以上ではあるが,いつも行っているのは,18%台である。今後,このことについて,実践的取り組みが強く望まれる。
(3) 「観点別学習状況」の評価への取り組み
指導要録に新しく,「観点別学習状況」の欄が設けられ,目標達成状況を「 + 」・「空欄」・「一」で記入することになった。これは,児童生徒一人一人の達成状況を,より的確にとらえ,指導に生かそうとするものである。そこで,各学年ごとに各教科の観点をどのように具体化すればよいか達成目標を明確に設定し,どんな場合が「 + 」・「空欄」・「一」であるかという達成基準を学校として決めておく必要があろう。ところが現状は,達成基準が学級担任や教科担任にまかされていることが多いようである。各学校においては,「観点別学習状況」が設けられた趣旨を十分理解し,達成目標や基準の作成に,その組織を生かし,取り組んでいくことが大切と思われる。
(4) 情意面の評価への取り組み
「観点別学習状況」の評価で,最も難しいと言われるのが,関心・態度などの情意面の評価である。これが取り入れられた理由は,教科の評価には,単に知識・理解などの認知面の評価だけでなく,その側面に,関心・態度などの情意面があるからである。本調査の結果,何らかのかたちで情意面の評価を行っているのは51%台であるが,いつも行っているのは12%にすぎない。情意面の評価は難しいが,情意目標の分析をとおして評価の視点を明確にさせ,より客観性の高い資料を得るような評価法の開発が望まれる。
さて,アンケート調査に基づいて,本県の教育評価の実態及び今後の課題について述べてきた。これらの課題について,更に検討し,次年度は実践研究として,取り組んでいきたい。
参考文献
○橋本重治・金丼達蔵・辰見敏夫 「教育評価要説」 図書文化 1982
○梶田叡一 「新しい教育評価の考え方」 第一法規 1981
○秋田県教育センター 「教育評価に関する実態調査結果報告書」 1982
○福島県教育庁義務教育課 「新版学習指導の手引」 1980