研究紀要第56号 「学習指導と評価に関する研究 第1年次・実態調査」 -040/053page
V ま と め
本年度は,教育評価に関する資料収集や文献による理論研究などを主とした基礎的研究を行い,併せて,今後の研究の方向づけのため,アンケートにより,県下の小・中・高等学校における「指導と評価」の実態について,調査を行った。
その結果から,現状を把握し,更に,今後の課題を総括的にまとめる。
1 調査のまとめ
調査の結果については,前章において,各問いごと,更には調査領域ごとに分析と考察を加えてきたが,それらを要約し,学習指導と評価に対する取り組みの現状を整理しておきたい。
まず第一に,「指導計画への評価の位置づけであるが,小・中・高等学校とも,ほぼ90%の教師が何らかのかたちで位置づけている。しかし,評価の観点や方法が具体的に位置づけられていないことが多いようである。
第二に,「授業前の評価」で,診断的評価といわれるものであるが,これと何らかのかたちで行っている教師は,小・中・高等学校とも,ほぼ半数であり,このうち,約95%が評価の結果,目標の達成が不十分とわかった児童生徒に対して,補充を行っている。
第三に,「授業中の評価」で,いわば,形成的評価であるが,児童生徒の目標到達状況を何らかのかたちで確かめながら指導を進めている教師は,小・中・高等学校とも80%以上である。
また,これら教師の70%以上が目標に未到達の児童生徒に,いろいろな機会をとらえて,治療指導を行っている。
なお,児童生徒の自己理解への取り組みについては,小・中学校では,「時々行っている」をふくめて50%台だが,高等学校では,40%に達していない。
第四に,「授業後の評価」で,いわば,総括的評価である。単元,題材の終了時における評価を何らかのかたちで行っている教師は多く,特に,小・中学校では,90%以上行われている。高等学校でも,ほぼ70%に達している。
また,授業後の評価の結果,再指導を行っていると答えた教師のほぼ80%以上が,個人,小集団,学級全体などで,その授業の中,休み時間,放課後,さらには長期休業日のなかで再指導を行っている。しかもその評価は,学習指導改善の資料や児童生徒の目己理解の資料として,活用されている。
第五に,小・中学校の指導要録に新しく記入されることになった「観点別学習状況」の評価である。
この評価に当たっての達成目標の決定は,小中学校とも担任にまかされているのが一番多い。また,「十」・「空欄」・「一」の達成基準は,「学校で決めている」が48%,中学校では,「担任にまかされている」が38%となっている。
第六に,情意面(関心・態度など)の評価であるが,教科に対する情意面の評価を何らかのかたちでで行っている教師は,小・中・高等学校とも50%台である。
最後に,自由記述による「指導と評価」についての悩みや意見であるが,特に,「評価基準」「評価の活用」,「学力の低い児童生徒の指導と評価」,「情意面の評価」についての悩みや問題が多く出されている。
2 今後の課題
前段において,本調査結栗に基づいて実態を述べてきたが,これらをみる時,今後取り組むべき課題は多い。そこで,主な課題について,述べることにする。
(1) 教育評価に対する関心
「指導計画への評価の位置づけ」では,小・中・高等学校とも約90%の教師が,「何らかのかたちで,指導計画に位置づけている」と答え