研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -049/076page
も,表現そのものが未熟で,評価の観点に迷うことが多い。
オ 評価を事後指導に生かせない。
- 生徒一人一人に寸評を書いて返却するが,のびのびになり,形成的,発展的評価となっていかないジレンマがある。
- 生徒―人―人の到達目標を指示し,指導しながら評価じているが,次回の学習に生かそうとせず,同じまちがいを繰り返している生徒が多い。
- 生徒は,自分の作品がどういう価値をもっているかわからないため,書くたびごとに作文意欲をなくしている。
(7)アンケート調査のまとめ
アンケート調査の結果については,これまで設問ごとに分析と考察を加えてきたが,なお,それを要約し,今,教師は作文の指導に当たってどのような問題点に直面しているか,また,その原因は何かを考え,それらの問題についてそれぞれの解決策を探ってみたい。
まず第一には,児童生徒に作文を書かせる前に,焦点化された明確な目標をもって指導するかということであろう。そのうえ,指導目標の分類,系統化をはかりながら,いかに指導要領に即した指導をするかということが大切になってくる。
第二には,作文学習における児童生徒のつまずきの問題であるが,教師側としては,時間的にも労カ的にも容易ではないけれども,児童生徒のつまずきや悩みを指導過程の中で発見し,その指導法を確立することは,きわめて重要であろう。
第三には,児童生徒の個別化をはかるととである。児童生徒一人一人の個性や能力に応じた指導をすると同時に,児童生徒一人一人につまずきの自覚を促すことによって,児童生徒の作文学習に対する意欲も換起されるものと思われる。
第四には,評価基準を確立することである。国語科の指導から,児童生徒の実態に応じた到達目標を設定し,その目標に対して,どの程度達成されたかの評価基準を明確化することである。
第五には,形成的評価の具体的な実践を試みながら,児童生徒一人一人の基礎能カの充実をはかることである。
このように,児童生徒一人一人の作文力を伸ばすためには,教師は常に児童生徒一人一人の「書ける」「書けない」症状を的確に診断し,その診断に基づいた具体的な治療の手順,方法を工夫することによって,個に応じた作文指導ができるものと思われる。
3.診断と冶療の理輪と方法
(1) 作文指導における診断と治療の意義
1) 作文の基礎能カの育成
作文指導の基本は,書けない児童生徒に対して,実際に書けるようにしてやることであ ろう。そのためには,なんといっても作文の基礎能力を身につけさせてやることである。 教師は常に「何を,どう書かせるのか」を頭において,具体的にその手順,方法を明らか にし,児童生徒の実態を見きわめることであると思われる。そして,その実態が明らかに なったら,教師はどんな教材をどのように与え,どう指導していけばよいかを目標分析し, 児童生徒一人一人の基礎能カの育成につとめれば,児童生徒が持っている作文学習の悩み やつまずきというものは,必ず少なくなると思われる。
2) つまずきの発見とその指導
児童生徒一人一人のつまずきや悩みを,個人カルテを用い,児童生徒個々の作文能力というものがどの程度なのか診断し,治療することによって,個々の作文カというものが,今まで以上に明らかになってくる。と同時に,児童生徒一人一人につまずきや悩みの自覚を