研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -052/076page
2) 診断・治療カードの利用
指導要領の指導事項に基づいて,児童生徒の表現力を伸ばすためには,診断・治療カードの利用なども一つのよい方法であろう。完成された文章だけを診断・治療するのではなく,文章のできあがって行く過程での診断が必要に思われる。この診断,治療カードとは,作文を書く指導過程において,取材・構想・叙述・推敲など,どの能カが定着し,どの能カが不足しているか,一人一人の児童生徒の「表現カ」を詳細に診断,治療することである。
<表2> 診断・治療カード
年 月 日 題 氏名 評価の観点 評価項目 評価 診断 治療 A B C 記述前 発想(目標) (1)なんのために作文を書こうとするのか,相手意識を明確に持っているか。 (2)なんのために作文を書こうとするのか.目的意識を明確に持っているか。 (3)読み手を想定して書いたか 取材 (4)材料を豊富に集めているか。 (5)確実な材料を取り上げているか (6)材料は主題をよく支えているか。 (7)材料は読み手に興味があるか。 構想 (8)前もって書く順序を工夫したか。 (9)読み手にわかりやすいようにエ夫したか。 (10)いままで学習したことを生かそうとしたか。 <表3> 診断・治療カード
年 月 日 題 氏名 評価の観点 評価項目 評価 診断 治療 A B C 記述中 叙述 (1)書きはじめるまでに要した時間に問題はないか。 (2)取材メモ,構想メモを用意して書いているか。 (3)書き表し方にエ夫をこらして書いているか, (4)書き表し方や用語が難しくて,停滞した回数に問題はないか。 <表4> 診断・治療カード
年 月 日 題 氏名 評価の観点 評価項目 評価 診断 治療 A B C 記述後 主題 (1)主題をはっきりとらえているか。 (2)主題が終りまで一貫しているか。 (3)主題文でうまく言い表しているか。 文
用語
記載(4)個々の文には,主語と述語が正しく対応しているか。 (5)修飾語と非修飾語の関係を考え誤解されないよう配慮したか。 (6)文と文との接続に適切な配慮がされているか。 (7)指示語が正しく用いられているか (8)「だ・である」体と「です・ます」体を混用していないか。 (9)原稿用紙の使い方は正しいか。 (10)内容が題とぴったりしているか (11)生き生きとした自分の言葉で書いているか。 作文の治療と学習指導要領の目的達成
児童生徒一人一人の作文能カはどの程度なのかの診断項目を基に,一人一人の作文を分析し個々の児童生徒の実態をみきわめることである。児童生徒の作文カの実態が確かになればなるほど,次に治療すべき内容と事柄が明らかになり,個に応じた指導をどうしたらいいのかがわかってくるであろう。と同時に,学習指導要領の目標を達成するためには,いろいろな指導事項が定められているが,その指導事項に対しても具体的にどう指導すればよいかがわかってくる。
(3) 作文指導における診断と治療の方法
作文についての児童生徒の能カ・態度等の評価の資料を得る方法としては,質問紙法,観察法,作品の検査,診断テスト法,面接法,短作文,相互評価法,自己評価法などが考えられる。評価に当たっては,それぞれの方法の特質を考え,評価の目的・対象・材料・時期・労カ等に応じて適切な方法を選ぶのがよいようである。
1) 診断の用具と方法
ア 質問紙法
(ア)調査したい事項を紙に書いて質問し,それに答えを記入させる方法。
(イ)指導計画作成の参考資料として,作