研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -056/076page
りていねいに読んで,その通りに原稿用紙に書かせる。そして,順次高次な記述上の問題点をもった文を,速度を考えて聴写させる。記述後,正しく表記したモデル原稿を示し,誤りを見い出し,正しく書き直させる。読み方は,次のように句読点やかぎ(「 」)なども読む。
<例> (小1年)
ぼくがけんかをして てん なくと てん かぎ こらっ まる けんかぐらいで てん なくもんじゃない まる かぎ と てん 大きな声でいいます まる イ) 視写
小学校低学年などでは,簡単な文を板書し,その通りに書くことから始める。高学年になると,教科書教材や読書した本などの中から,自分の表現に生かしたいと思うところや, 「この表現はうまいなあ」,「こんな表現があるんだなあ」などと感心したところを抜いて,部分視写させたりする。
ウ) 写実
事象を見て,見た通りそのまま描写していく方法である。たとえば,一輪の花を観察して写実する。形,色,大きさ,陰影,模様,位置関係,手ざわり,においなど,観察視点を転換して写実する。
エ 推敲指導
(ア) 症状― せっかく書きあげ提出した作文なのに,先生から作文が返ってくると,まちがいだらけで,赤ぺンでたくさん訂正されているので,作文を書く自信がない。
(イ) 治療法
ア) 書きあげたものを読み返すという習慣を身につけさせる。
イ) まちがった表現や誤字は,自分では 発見しにくいので,隣同士で相互批正させる。
ウ) 本人の許しを得て,共同推敲させる。この共同推敲は,教師が推敲の問題点をとらえていることが前提であり,ただやみくもに作者の気持ちを無視して文章をいじくりまわすことのないように注意させる。
エ) 使い方に自信のない言葉は,辞書で調べさせる。
オ) 書いたものを音声化し,文の乱れ,語い,旬読点の誤りなどに気づかせる。
カ) 小学校1年生では,教師が代読してやり,まちがいに気づかせる。
キ) 推敲指導上留意すべき点
・書く意欲をなくさない。
・学年的配慮をする。
・読み返しと自主的訂正習慣を身につけさせる。3) 作文の主なつまずきと症状の診断・治療一覧表
学習の段階 主なつまずき 症状 診断の方法 治療の方法 取材 ・題材が決まらない。 ・書くことが見つからない。
・何について書けばよいかわからない◎観察法
○面接法
○質問紙法
○作品の検査(1)題さがしのさがしの手がかりになる言葉を与える。
(2)その言葉から思いつくこと感じることを題材カードに書かせる。
(3)書いたカ―ドを見て,書けそうな題材を選ばせる。
(4)選んだ題材について,再び思いつくこと,感じることをカ―ドに書かせる。(1カード1文)
(5)書いたカ―ドを見て,何を中心に書くか(主題)を決めさせる。構想 ・構想の立て方がわからない ・書くことは大体決まったが,どのような順序で書けばよいかわからない。 ◎面接法
○診断テスト法
○作品の検査(1)書くための構成設計図を書かせる。
(2)中心になる内容を書く。
(3)中心内容を支える部分を,1カ―ド1セソテンスで書かせる。
(4)中心内容,それを支える部分の要点が決まったら,さらに要点のまわりにどんなことを書くか細かく与えさせる。
記述 ・文をふくらますことができない ・言葉の使い方や表現の仕方がわからない。
・短い文章しか書けない。
・読む人によくわかるような文章が書けない。◎作品の検査
○短作文
○診断テスト法
○観察法(1)表現の仕方の練習をする。
1)聴写
・低学年…簡単な文をゆっくり読んで,そのとおりに書かせる。
・高学年…記述上の問題点をもった文を,速度を考えて聴写させる。記述後,モデル原稿を示し誤りを見い出し,正しく書き直させる。
2)視写
・低学年…簡単な文を板書し,そのとおりに書く。
・高学年…教科書教材や読書した本の中から,「この表現はうまいなあ」と思ったところを抜き出して,部分視写させる。
3)写実
事象を見て,見たとおりそのまま描写させる。