研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -063/076page
生徒一人一人の健康や体カ,運動技能等の能カ・適性に即した適切な運動処方による科学的練習法に基づいて計画的に運動を行うことを目指している。
以上のように,表現は同じようであっても,小学校では合理的な運動の実践というよりは,小学校の児童の発達段階に適した運動を経験させることに重点を置いており,中学校では,健康や体カの増進を促すような科学的理解に基づいた合理的な運動を実践させることを教科の重点としている。さらに,高等学校では,生徒一人一人の能カ・適性をより伸長させ,生涯スポーツに結びつくような能力を習得させるための科学的,合理的な実践を目指していることが理解できる。
このように,目標は,総括的に,しかも簡潔に示されておりながらも,それぞれの目標を比較してみると,小学校はより生活における運動実践や健康の問題が重点であり,中学校ではそれをいっそう発展させ,各運動領域の基本的内容の習得に重点がおかれ,高等学校では,個人の能カ・適性をより伸長させ,生涯を通じての運動生活の充実に必要な能力を習得させることに重点をおいて取り扱うこととして考えられているのである。
表1.体育・保健体育の目標分析表
目標に近づくための方法 小学校 ・適切な運動の経検
・身近な生活における健康安全の理解
中学校 ・運動の合理的な実践
・健康・安全についての理解
高等学校 ・運動の合理的な実践
・健康や体カについての理解
→
めざす方向 ・運動に親しませる
・健康の増進
・体カの向上
・楽しく明るい生活・運動に親しむ習慣
・健康の増進'
・体カの向上
・明るく豊かな生活・心身の調和的発達
・健康の増進
・体カの向上
・明るく豊かで活カのある生活3.器械運動における小・中・高の一貫性の構造
一人一人の児童生徒に対して,それぞれの発達段階で,それぞれの能カに応じた適切な学習指導を行うことができるようにするために,小・中・高等学校の一貫的なかかわりを構造化してとらえておくことが必要である。
(1)器械運動の領域区分
器械運動の領域は,目標や新しい強調点との関係から,児童生徒の発達的特性や運動の特性との関連について一層の吟味が加えられ,運動領域の整理統合や内容の精選が行われた。 (表2)
表2からわかるように,特徴としては小学校の第1学年から第3学年までは,器械運動の領域を設けることを改め,新たに「基本の運動」の領域が設けられたことである。これは,児童の発達の特性や運動欲求等に応じて設けられたもので,特
表2 器械運動にかかわる領域
種別 小学校 中学校 高等学校 学年 1〜2年 3年 4〜6年 1〜2年 3年 領域 基 本 の 運 動 器械運動 個人的スポーツ 内容 ・固定施設や器具を使っての運動 ・器具を使っての運動 ・鉄棒運動
・マット運動
・跳び箱運動器械運動
・跳び箱運動
・鉄棒運動
・マット運動
・平均台運動
※鉄棒運動〜平均台運動 2種目選択・陸上・器械・水泳(1又は2種目選択可) 器械運動
・マット運動
・鉄棒運動
・跳び箱運動
・平均台運動・陸上・器械・水泳(1又は2種目選択可)