研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -064/076page
定の運動種目(器械運動,ボール運動など)としてではなく,運動の楽しさや喜びにふれることができ,しかも,体の基本的な動きを身につけ,各種の運動の基礎となるよい動きができるようにすることをねらって構成されたものである。
第4学年からは,「器械運動」としての技能が学習できるようになることから,従前と同様に「器械運動」とされ,克服的なスポーツとしての特性を一層明確にされ,基礎的な運動技能を習得することに重点をおいている。
中・高等学校では,運動の特性や課題に基づいた効果的な指導を行い,個人の技能が最高に発揮できるよう領域が「個人的スポーツ」と改められた。中学校では,運動の合理的実践方法を身につけ,運動能カや基礎的・基本的技能を養うこと。第3学年においては,陸上競技,器械運動又は水泳のうちl又は2を選択できるようにしてある。また,器械運動では,鉄棒運動,マット運動又は平均台運動のうちから2を選択できるようにしてある。さらに,高等学校では,運動実践に関する科学的理解を深め,運動の技能を高めるとともに,生涯を通じて運動実践に必要な能カや態度を育てるようにしている。また,各学年において,器械運動,陸上競技及び水泳のうちから1又は2を選択して指導するような領域になっている。
(2) 器械運動の特性とねらい
器械運動の特性は,個人的スポーツとして,個人の技能を最高度に発揮するところに特徴があり,克服的スポーツ(他人との競争ではなくて,できなかったことができるようになることを目指した個人の勢力や工夫に基本的な課題がある)としてとらえている。また,スポーツの性格で考えるので,基本的にはスポーツを実践する者の運動欲求によって支えられる特徴がある。したがって,自ら進んで行い,行った後にその運動の楽しさを味わった満足感が伴うような運動として児童生徒に学習させる必要がある。生涯にわたって運動に親しむことができるようにするためには,単に体カの向上や人間形成の上によい結果を生むというだけではなく,それぞれの運動の楽しさを同時に体験させる必要があるわけである。
体育科,保健体育科の目標や上記のことから,器械運動のねらいは,小・中・高等学校ではそれぞれ次のように示されている。
○ <小学校>
自己の能力に適した課題をもって各種の運動の技能を養うとともに,器械の使用の仕方を工夫し,互いに協カし,安全にしかも根気強く運動できるようにする。
○ <中学校>
1)各種の運動の技能を養い,懸垂,跳躍,回転及び平均の能力を高めるとともに組合せや跳び方を工夫することによって,楽しく運動できるようにする。
2)自己の技能に応じて,適切な課題を決め,計画を立て,互いに協カして運動できる態度を養う
3)器械運動の持性や技の組合せ方などを理解させるとともに,正しい練習法を知り,安全に運動できるようにする。
○ <高等学校>
1)自己の能力に合った目標や課題を決め,各種の運動の技能を習得し,これを一層高めるとともに,自己の能力を最高度に発揮できるための強い意志カと体力を身につけさせる。
2)互いに協カしながら課題の解決に向かって努力したり工夫したりする態度を育てる。
3)健康・安全に留意し合理的・計画的に練習できる能カや態度を育てる。
このことは,小学校では器械運動固有の楽しさを未分化の状態からスポーツとして体験させ,本格的なスポーツは,中・高等学校になって経験させる。言わば,中学校と高等学校では個別化していく。あるいは,個人の欲求とか興味というものに深くかかわるものをぐんぐん伸ばしていく。いろいろなものを経験させて,どれが楽しいかということをわからせるまでが中学校で,楽しさを徹底的に追求させるのが選択制のある高等学校といえる。