研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -065/076page
(3)器械運動の内容
器械運動の内容は,技能的内容と態度に関する内容から構成されている。
1) 技能的内容
小学校では,鉄棒運動,マット運動及び跳び箱運動を,中学校では,小学校の内容に平均台運動を加えて取り扱うこととしている。学習指導要領に示されている器械運動の内容は,表3の通りである。小・中学校では,運動の課題を明確にし,各種目の運動技能は自己の能力に応じたものを選択できるようにしている。高等学校では種目名しか示されていないが,指導書,解説書によれば,小・中・高等学校一貫して自己の力に応じた課題を持ち,その課題に挑戦していくわけであるが,その内容は, 「単一わざ」より「連続わざ」を重視している(跳び箱では「跳び越しの多様化)。その理由は,連続わざによって克服スポ―ツの基本的な喜びであるところの成功経験と技能の進歩をだれにでも経験させることが可能になること,また,自分の連続わざをつくることによって自己の創造性を発揮できる喜びが得られることなどによるものである。また,中・高等学校で種目名のみ示しているのは,具体的な内容は学校や教師の創意を生かした指導ができるようにするためである。
表3 学習指導要領の器械運動の内容
小学校 (1)自己の能力に適した課題をもって次の運動を行い,その技能を養う。
ア.鉄棒運動及びマット運動について
連続わざができるようにする。(4年)
新しいわざを加えた連続わざができるようにする。(5年)
新しいわざを加えた連続わざが調子よくできるようにする(6年)イ.跳び箱運動について
腕立て跳び越しができるようにする。(4年)
大きな動作で腕立て跳び越しができるようにする。(5年)
大きな動作で腕立て跳び越しが調子よくできるようにする(6年)(2)互いに励まし(協カし)合って,根気強く運動できるようにする。
器械の使用の仕方をエ夫し,安全に運動できるようにする。
中学校 (1)自己の技能に適した課題をもって行い調子よくできるようにする。
ア.鉄棒運動,マット運動及び平均台運動について技の組合せを工夫して行うことができるようにする。
イ.跳び箱運動について
跳び方を工夫して行うことができるようにする。(2)器械・器具の安全や清潔に留意して運動できるようにする。
高等学校 器械運動
(1)具体的内容は示されていない
(2)安全に留意するものとする。
2)態度に関する内容
態度については,克服的スポ―ツの特性から,一つは,危険が伴いやすいので,安全面の配慮が十分に必要であること。すなわち,器具の使用の仕方をエ夫し,安全にしかも合理的に運動ができるようにすること。二つには,用意周到に準備した自己の課題に勇気と決断をもって挑む態度が必要なことが,小・中・高等学校一貫して示されている。また,練習する上での態度として必要なのは,自分の課題に向かって根気よく努カすることや,グル―プで役割分担をし,互いに教え合ったり励まし合ったりする協カの仕方が大切なこととしている。
器械運動の技能内容における一貫性の構造
運動の内容が,小・中・高等学校一貫性に基づいて精選され(表3),具体的な内容は記載されていない理由は前に述べた。しかし,それぞれの学校で指導計画を作成し個性,能カに応じた適切な指導を行っていくためには,何らかの参考になるものが必要である。そこで,学習指導が,順序正しく系統的にできるよう指導書,解説書に例示されている技能的内容を,各学校種別及び各学年の基本的指導事項と理解して,小・中・高等学校を通した系統図を作成した(図4〜6)。これらの図は,小・中・高等学校の一貫した効果的な学習指導に役立てることができる。ただし,平均台運動は,中・高等学校のみなので省略した。