研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -066/076page

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1)鉄棒運動の一貫性の構造

 鉄棒運動は,鉄棒を中心軸とした回転や振動の運動群であるといえる。したがって,個々のわざを習得する場合には,正しい懸垂や支持の仕方,あるいは勢いのつけ方や回転の仕方を身につけることが主要な運動の課題となっている。

 指導書,解説書に例示されている鉄棒運動の技能内容を一覧表にすると図4のようになる。これをみると,児童生徒の能カ,興味,意欲の適切な経験を通して,易から難へと新しいわざへ挑戦し,連続わざに結びつけるような目標や欲求をよび起こすように内容が発展的,系統的に精選されていることがわかる。小学校3年生までは,基本の運動の領域の中で,固定施設や鉄棒を使っていろいろな遊びを夢中になって遊ぶことにより,運動の楽しさ,喜びに触れながら,鉄棒運動に必要な懸垂カや空間での調整力などの基本的な動きを身につけるように配列されている。

 4年生からは,「さか上がり」の系統と「足かけ上がり」の系統が,順次新しいわざを入れながら連続わざをつくるような配列がされている。4年生では,「自分の力にあった連続わざ」が課題となり,連続わざをつくること自体が重要になり,5年生6年生では,さらに新たなわざを加えて連続わざをつくることが,技能の習得とならんで重要な内容となっている。中・高等学校は,小学校の発展として懸垂系および支持系の内容が具体的種目として例示されている。

 また,小・中・高等学校一貫して「上がり→回転→下り」の「連続わざ」を重視しており,その組合わせをエ夫する場合には,個々の運動を,上がり,回転,下りの運動に分類して,それらを組合わせ,一連の運動として実施できるようにエ夫することが必要であると解説している。なお,組合わせを工夫するには,個人差に応じて,既習の運動を中心に,新しく学習したものを組み合わせるという指導が大切であることも理解できる。

図4 鉄棒運動における技能内容の系統図

懸垂系―振動ひねりや振り上がりなど
支持系―足かけ回転やけ上がり
○ 一方に偏ることなく平均して技能の向上を図るo
○ 「上がる―回る―下りる」の連続技が,新しい技を組み合わせてできる。
中学校     ↑
逆上がり―腕立て前転・後ろ下り
け上がり―腕立て前転・後ろ下りなど
○ 上がり.回転,下りの三つの要素を考慮して,簡単なものから複雑な
 ものへと発展させ,組み合わせる数も,次第に増やして「上がり―回転
 ―下り」の順に調子よくできるように工夫する。
○ 連続技ができない場合,技能に応じて指導する。
逆上がり・後ろ下り    け上がり―腕立て前転
腕立て前転―腕立て後転    腕立て後転―振り跳び下りなど
小学校     ↑
6年
さか上がり―腕立て前転―前回りおり
足かけ上がり―足かけ前転・転向前おり
○ 「上がる―回る―おりる」について,新しいわざを加えた運続わざが調
子よくできる。
5年        ↑
さか上がり―腕立て後転(連続)・前回りおり
足かけ上がり―足かけ後転(連続)・踏み越しおり
○ 「上がる―回る―おりる」について,新しいわざを加えた連続わざがで
きる。
4年        ↑
さか上がり―腕立て後転・前回りおり
足かけ上がり―足かけ後転・踏み越しおり
○ 鉄棒で「上がる―回る―おりる」わざを,自己の能カに適した課題を
もって連続わざとしてできる。
基本の運動   ↑
3年        ↑
器具を使っての運動
 さか上がり・前回りおり    足かけ上がり・踏み越しおり
 ○ 鉄棒に上がっておりる
2年        ↑
固定施設や器具を使っての運動
ジャングルジム,雲梯,ろく木,登り棒などでの登りおり,懸垂移行
シーソー遊ぴ
鉄捧での腕立て跳び上がり,懸垂振り
1年        ↑
固定施設や器具を使っての運動
ジャングルジム,雲梯.ろく木,登り棒などでの登りおり,懸垂移行
ブランコ遊ぴ
○ 登りおり,前向きや横向きでの懸垂移行,バランスのよい動き

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