研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -067/076page

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2)マット運動の一貫性の構造

 マット運動は,マットという弾カのある平面を利用して行う回転運動や姿勢保持の運動で,それらは,跳躍や腕の支持およびそれらの複合した支持跳躍の運動因子から成り立っている。このため,マット運動の技能の中心は,有効なジャンプの仕方や支え方,平均の保ち方などで,これらを連続してできるようにすることが主要な運動課題となっている

 指導書,解説書に例示されているマット運動の技能内容の系統図が図5である。この図からもわかるように,マット運動で取り扱う内容を大別すると,次の三つに分けることができる。

ア.身体をマットに接触しての回転
イ.倒立を経過して回転する倒立回転
ウ.倒立などの姿勢保持の運動

 これらの内容が,小学校から系統的,発展的に順次例示されている。すなわち,小学校3年生までは基本の運動の領域で,多彩な動きをさせながら転回の感覚を身につけるようにする。4年生からは,前述の鉄棒運動と同様に,自己の能力に適した課題をもって連続わざとしてできることをねらいとしている。身体の発達では,神経系が10歳前後で大人の80%位まで発達することから,まず4年生で回転系の前転,後転の連続わざが例示され,5,6年生になると,神経一筋の調整カが発達することから倒立回転系の腕立て側転が例示されているのはよく理解できる。

 中・高等学校になると,小学校で習得している技能をベースに,自己の能カの程度に応じて新しいわざを組み合わせて連続わざができるようにすることに重点をおいている。

 自己の能力に適した課題の設定にあたっては,小・中・高等学校一貫して,児童生徒の個々の技能に応じて,それにふさわしい課題を設定すること。その際,これまでできないわざができるようにするなど,一人一人が課題を設定し,それを目指して努力することが必要であると解説している。

図5 マット運動における技能内容の系統図

高等学校
回転系― 倒立を経過して回転したりする。
巧技系― 倒立や片足の平均立ち,片足旋回
○ 連続技ができるようにすること。
○ 新しい技を組み合わせて行うこと。
中学校     ↑
同系統の技の組み合わせ
 前転― 後任― 伸膝後転  側方倒立回転の連続など
異系統の技の組合せ
 側方倒立回転 開脚前転
 前方倒立回転跳び 跳び込み前転など
小学校     ↑
6年
前転― 開脚前転(連続)― 前転
後転― 開脚後転(連統)― 後転
腕立て側転(連続)
○ 転回を中心に新しいわざを加えた連続わざが調子よくできる。
5年        ↑
前転― 開脚前転― 前転
後転― 開脚後転― 後転
腕立て側転
○ 転回を中心に新しいわざを加えた連続わざができる。
4年        ↑
前転― 開脚前転
後転― 開脚後転
○ 各種の転回が自己の能力に適した課題をもって連続わざとしてでき
る。
基本の運動     ↑
 
3年       ↑
器具を使っての運動
  横回り    前転(後転)
○ マットの上で転回ができる。
1・2年      ↑
模倣の運動
 兎の散歩   小型自動車遊び
 小鳥ごっこ   模型自動車
○ 軽やかに走ったり,方向を変えたり止まったりして模倣ができる。
固定施設や器具を使っての運動
  ジャングルジム,雲梯,ろく木,登り棒などでの登りおり,懸垂移行
  ぶらんこ遊び シーソー遊び
○ 登りおり,前向きや構向きでの懸垂移行,バランスのよい動き。

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