研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -071/076page
ウ.跳び箱で,これから練習しようというわざや跳び箱の高さを決めさせる。
○ まず自分のできる跳び方で安全を確認させ,次に,自分のやってみたい課題を決めさせる。
○ 器械運動の特性から,自分のできないわざに挑戦させるようにする。
(2)展 開
ア.練習時間を多くとり,運動課題に果敢に挑戦させ,技能向上に向かって積極的に学習させる。
イ.1回ごとに「今度の跳び方は,こう直そう。」とグループ内で教え合わせ,で きない跳び方をまず安全にできるようねらいを持たせて練習させる。
ウ.できたわざを,より高く,遠く,調子よくできるように,あるいは,跳び箱の 高さや踏み切り板との距離が若干違っても失敗しないで確実にわざができるよう根気強く練習させる。
(3)終 末
ア.各グループ内で発表することを前提に自分のわざの仕上げの練習をさせ,発表会をする。
イ.児童生徒が新しいわざができた喜びがみられたか把握する。
器械運動は,中・高等学校と進むにつれて,一人一人の課題が,スタ―ト時に同一でなくなる。しかし,指導は,導入,展開,終末いずれの段階でも,生徒が自分なりの課題に常に意欲的に挑戦していけるような課題づくり,克服の喜びを味わう学習が自主的にできるよう技能の段階表を作成するなどを配慮してやることが必要である。
(2)器械運動の評価
評価は,学習指導によって児童生徒がどのように変容したかを目標に照らして明らかにすることであり,評価の機能は,一般に次の三点にまとめることができよう。
ア.評価は,児童生徒自身が自己理解することであり,教師が児童生徒のもつ可能性を発見するためのものである。また,一人一人が自己評価や相互評価によって自己の特性や進歩の程度を知ることによってフィ―ドバックしたり,自覚をもって学習に取り組ませることである。
イ.評価は,教師自身の指導計画や指導法の改善充実を促すためのものである。
ウ.評価は,指導要録の記載,その他の必要を満たす上で活用できる資料である。
評価の観点と場については,指導書,解説書でも次のように解説している。
1)評価の観点
評価は,児童生徒が学習すべき内容をどれだけよく身につけ,目標に対してどれだけ接近したかを明らかにすることであるから,評価の観点は,指導の目標や内容と一致するものである。
学習指導要領では,目標や内容を大綱的に示していることから,目標や内容がそのまま評価の観点とすることができる。したがって,器械運動の評価の観点は,運動技能,社会的態度,健康安全に留意して運動する態度などが挙げられる。具体的には,
ア.器械運動の楽しさや喜びがみられたか。
イ.自分のカにあった課題を決めることができたか。
ウ.課題に応じた練習の進め方ができたか。
エ.自分の課題がどれだけ達成できたか。などの観点を具体的な評価尺度でもって評価し,指導に生かしていくことが大切である。
2)評価の場
評価は,一定時間の学習指導の成果を,その学習後に評価するだけでなく,学習指導の過程においても評価することが必要である。そのために,学習指導過程に即して評価の計画を立てて評価することが大切である。
学習指導の導入の評価は,学習指導の方向を明確にするためのもので,これによって学習指導の具体的なねらいが把握でき,また,このことから評価の観点を一層具体化することに役立てること