研究紀要第59号 「学校経営改善に関する研究 第1年次」 -001/053page
I 研 究 の 趣 旨
近年,教育現場においては,学校の教育目標(以下,“教育目標”と略記)を達成するための主体的な学校経営の確立,自発的・創造的な教育活動の展開など,学校経営の質的改善が強調されてきている。
本研究は,「学校経営改善に関する研究」の一環として,既にまとめた,
「学校経営評価に関する研究」 (紀要1,36号)「教育課程の経営に関する研究」(紀要45,50,55号に次ぐものである。すなわち,昭和53年度からの3か年と,昭和56年度からの3か年を,それぞれ一区切りとして集成をした,これら二つの研究は,学校経営及びその中核としての教育課程について,マネージメントサイクルの考え方や経営的な発想に基づき,そのあり方を探るため,理論研究を行うとともに,県内小・中学校における実際を追究したものであった。
以上の研究の過程で,教育的機能の促進と動態的な経営観を重視する学校経営現代化の視点で,教育課程について分析・検討した結果,教育諸活動に教育目標が生きてはたらくようにするため,教育目標―教育課程―日々の授業をPDSP'のマネージメントサイクルに沿ってとらえ直すことが必要かつ重要な課題であるという結論を得た。
そこで,この課題が,現在の教育現場からの要望と合致して受け入れられ,さらに,昭和59年度から3か年をかけて新たに取り組む研究となり得るものであるかどうかを確かめるため,訪問による予備調査を59年の1月から2月にかけて実施した。 (資料編 参照)
訪問をした各学校では,それぞれが,自校の教育目標を樹立し,その具現化に努めてはいたが,日々の授業や諸教育活動に教育目標が真に生きてはたらくようにするにはどうすべきか,そのための教育課程=教育計画はどうあるべきか,などについては模索中であった。
このように,現在,教育現場では,教育目標具現ということについての関心がひじょうに高まっており,学校がおかれている地域性,その学校独自の特殊性などによって違いはあるものの,教育目標具現を目指し,何らかの形で努力をしている姿をうかがい知ることができ,教育現場においてもこのことが重要な課題とされていることを確認しえたのである。
特に,具現化のための方法が不明確であることが多く,教育目標を各教科・領域へ具体化することについては,ほとんど行われていないこと,一部で行われている,学年・学級へと具体化することをも含めて,具現化のための方法やモデル的な事例を待ち望んでいるということがわかったのである。
―方,学校経営についての各種の文献からも,教育目標を具現するために,教育目標と教育課程とのかかわりをさらに追究していかなければならないことが,今日的課題であることを見いだした。
その主なるものについて,関係部分を抜粋してみる。
○ 教育現場における指導の実際をみるとき,学校の教育目標と教育実践の間には,有機的関連が図られていないように思われる。
教育目標は設定したものの,実際の指導における内容の精選や指導方法には,教育目標が介在していない傾向にある。
教育目標を日々の教育実践にどのように直結させるかが大きな課題である。 (※1)
○ 目標は,なぜ生きてはたらかないか。
授業で教科の目標とともに学校の教育目標をどうしたら生かし得るか,という問いかけが多く見られる。